二宮啓が手掛ける「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」は3月22日、2021-22年秋冬コレクションを東京・南青山のコム デ ギャルソン本社で発表した。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のショー後、同会場で披露。客席の周辺には無数の白ユリが飾られ、甘く濃厚な香りが会場を包んでいた。これはコラボレーションを継続するフラワーアーティストの東信(あずままこと)によるものだ。
ステンレスの繊維で仕立てた立体的なドレス群
暗転してショーがスタートすると、点滅するライトがランウエイを照らす。ファーストルックは、ハリネズミのようなトゲで体を覆った身頃に、シルバーの骨組みが見える立体的なシースルースカート。シルバーの針がライトによってキラリと光る。「ノワール ケイ ニノミヤ」と言えば、立体的な装飾や、従来洋服には使われない素材を用いたアプローチが持ち味だが、今季題材にしたのはステンレスの繊維だ。
ショーの中盤では、ステンレスの針はレザードレスやライダースジャケットの表面に付くことで個々の強さが増していく。さらに袖や襟元のフリルの縁に施したり、スタッズのように装飾したり、ステンレスの繊維でジャケットやスカートを編み立てたりと、さまざまな手法で用いた。ラストには無数のユリの花を束ねたような形のドレスが登場。「ユリをモチーフにした訳ではないが、形として近いものができた」と二宮デザイナーは話すが、これもステンレスの繊維を薄く削ってチュールと合わせたもので、ユリの有機的な曲線が再現されていた。
“冷たい要素と尖ったもので
純粋にきれいなものを作りたかった”
二宮デザイナーは「今回はシンプルで強いモノを、さまざまな手法で表現した」と話す。「今までは硬質な素材と甘い要素など、相反する要素の対比で表現することが多かったが、今回はあえて甘さを入れずに冷たい要素と尖ったもので構成し、純粋にきれいなものを作りたかった」。会場に白ユリを飾った理由を尋ねると「来場者に、会場でしか感じられないものを用意したかった。ユリはシンプルだが、強い匂いや意味を持つ」と話していた。白ユリの花言葉は「純潔」と「威厳」。「ノワール ケイ ニノミヤ」は驚きの発想で美しいものを生み出そうとするピュアな創造性と、ストイックさも感じられる。想像の域を超えたクリエイションは、極めて異質で強い。