「政治的なことにはノーコメント」。4月8日に行われたファーストリテイリングの2020年9月〜21年2月期決算会見の場で、柳井正会長兼社長は記者からの質問にそう繰り返した。中国の新疆綿をめぐり、ウイグル人の強制労働問題や、それに対するグローバルSPA各社の対応が世界中で報道されている。「われわれは全ての工場、全ての綿花(の労働・生産環境)を監視している。(もしも強制労働などの)問題があれば取引は停止している。これは人権問題というよりも政治問題であり、われわれは常に政治的に中立だ。政治問題にはノーコメント」と発言した。
20年9月〜21年2月期の同社の連結業績(国際会計基準)は、売上高にあたる売上収益が前年同期比0.5%減の1兆2028億円、営業利益が同22.9%増の1679億円、純利益が同5.4%増の1058億円だった。欧米を中心にコロナ禍の影響が色濃い中で、ユニクロの国内事業と中国本土事業の増収増益が大きく貢献。「今も今後もアジアが世界の成長の中心になる。われわれはアジアで圧倒的なナンバーワンになる」とし、アジア各国でのEC強化や、アジアでの実店舗出店を従来の年間40〜50店から今後は100店前後に拡大していくと発表した。それを目指す中で障壁になりかねない問題として、冒頭のように新疆についての質問が相次いだ。
国内ユニクロ事業は売上収益が同6.2%増の4925億円、営業利益は同36.6%増の978億円。売り上げ増と値引き抑制などにより粗利率が2.9ポイント改善し、50.7%となった。6カ月間の既存店売上高は同5.6%増。海外ユニクロ事業は売上収益が同3.6%減の5218億円、営業利益は同25.9%増の670億円。欧米での苦戦で減収となったが、中国本土、台湾、ベトナムなどが好調。中国本土は粗利率が4.7ポイント改善したという。ジーユー事業(国内、海外含む)の売上収益は同0.3%増の1326億円、営業利益は同0.4%増の158億円と、ほぼ計画通り。
上期(20年9月〜21年2月)の上振れを反映し、21年8月期通期の連結業績を上方修正した。売上収益は同10.0%増の2兆2100億円(修正前は2兆2000億円)、営業利益は同70.7%増の2550億円(同2450億円)、純利益は同82.6%増の1650億円(修正なし)と予想。「下期(3〜8月)もコロナ前までの状況に戻すには難しい」(岡崎健取締役グループ上席執行役員最高財務責任者)としながらも、19年8月期の売上高2兆2905億円、営業利益2576億円に迫る勢い。回復ぶりが際立っている。