ファッション

「ディオール」のスナップチャット活用術 試着ARプロモーションで6倍の費用対効果

 「ディオール(DIOR)」はスナップチャット(SNAPCHAT)と協業し、2020年11月に拡張現実(AR)体験を使った“B27”スニーカーの発売プロモーションを実施した。「ディオール」は、同キャンペーンをこれまでのプロモーションで最も成功した1つと評価する。

 消費者はスナップチャットの“レンズ”(フィルター)を使い、カメラで自分の足を写すことで6種類の「ディオール」最新モデルのスニーカーがバーチャルで試着できる。「ディオール」公式アカウント内のほかにも、カメラ内で選択できる“レンズ”としてプロモーション展開し、さらにランウエイモデルやユーザーが同レンズで遊ぶ様子を動画で紹介。ユーザーはフィルター画面から直接商品を購入できる。

 「ディオール」によるとその結果、ARフィルターの導入とスナップチャット内の広告のみで3.8倍の費用対効果を生み、カメラ内で選択できるレンズからの使用を含むと6.2倍となったという。またアプリのビジネスアカウント向け機能を活用して、商品発売時にはアカウントのホーム画面をバーチャル試着ができるコンテンツのみにしてデジタルショールーム化した。これにより230万回以上のARフィルターの利用につながったという。

 24時間で消える写真・動画共有アプリとして人気を集め、現在はビジネスのマーケティングにも使われるスナップチャットにとっても、同キャンペーンはユニークだったという。ジェフリー・ペレス(Geoffrey Perez)=スナップチャット ラグジュアリー担当は、「ブランドがビジネスアカウントを通して、スニーカーの発売からすぐにキャンペーンを開始し、話題を集めていたのは初めてのことだった。加えて自社ウェブサイトやSNSチャンネルへの誘導など、さまざまなタッチポイントを生み出した。AR機能とこれらを結びつけて展開することで、オリジナリティーが際立った」とコメントした。

 「ディオール」は、19年には「リモワ(RIMOWA)」とのコラボカプセルコレクションに際してAR機能を搭載したフィルターをスナップチャットで公開した。ほかにも20年ホリデーキャンペーンでは、パッケージと関連したARフィルターをフェイスブック(FACEBOOK)とインスタグラム(INSTAGRAM)、スナップチャットで公開した。ブランド広報担当は、「Z世代はスマホからの購入に抵抗がなく、SNSでのショッピングに前向きであるため、われわれは常にARに関心を持っていた。デジタルでの購買体験の向上にいち早く取り組んできたが、新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックで消費者との新しいつながり方を考えなければいけない。AR機能を使うことで、安全性を保ちながら商品を身近に届けることが可能になる」と語った。

 スナップチャットはほかにも、「グッチ(GUCCI)」や「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」「ニックス プロフェッショナル メイクアップ(NYX PROFESSIONAL MAKEUP)」とパートナーシップを結んでいる。新しい技術やトレンドに対して一般的に懐疑的である傾向を持つラグジュアリー業界でも、パンデミックが後押しとなって新しいデジタルツールの導入に乗り出しているという。今後の課題としては、AR機能を一過性のトレンドではなくクリエイティビティーの新しい発表方法と認識し、若い消費者にリーチするためのビジネスのツールと捉えることが必要になる。

 デジタルマーケティングとカスタマーエンゲージメントのコンサルタントを行うスライブ・アナリティクス(THRIVE ANALYTICS)とVR・AR関連のリサーチを行うアーティレリィ・インテリジャンス(ARTILLERY INTELLIGENCE)の最新データによると、AR機能の利用者は増加しており、中でも一度使ったことのある人は日常的に使う傾向にあるという。消費者の29%は携帯端末でARを使用したことがあり、59%は少なくとも週に一回は使用している。78%が少なくとも月に一度は使用しているという。またスナップチャットの2020年12月期締結決算では、ユーザーが12カ月間で22%増加し、2億6500万のアクティブユーザーを持つと報告している。

 いわゆる“スナップチャット世代”であるミレニアル世代とZ世代にとって、ビジュアルを使ったコミュニケーションが主流になりつつあることを受けてペレス=スナップチャット ラグジュアリー担当は、「ミレニアル世代とZ世代の消費者は、これからの鍵となる将来性の高い顧客だ。いますぐにでもアプローチをかけ始めないと、ほかに流れてしまう恐れがある。ラグジュアリーブランドの発展と成長のためには、消費者の関心が集まる場所を狙うべきだ」と語った。

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