「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、中国第2位のEC企業JDドットコム(JD.COM)と提携した。
これはJDドットコムのアプリ内で“LV”と検索すると、中国のインターネットサービス企業大手のテンセント(騰訊、TENCENT)が運営する人気SNSウィーチャット(微信、WeChat)上にある「ルイ・ヴィトン」の公式ミニプログラムストアに誘導されるというもので、4月15日(現地時間)からスタートする。なお、JDドットコムとテンセントは2014年3月に戦略的パートナーシップ契約を締結している。
ケビン・ジャン(Kevin Jiang)JDファッション&ライフスタイル国際事業プレジデントは、「中国におけるラグジュアリーECをいっそう充実させるにあたり、『ルイ・ヴィトン』と提携することができて大変うれしく思う。今回のビジネスモデルはこれまでにないもので、高級志向の消費者にシームレスな買い物体験を提供できる」と語った。
「ルイ・ヴィトン」は基本的に直営店および自社ECでのみ商品を販売しているが、およそ4億7000万の年間アクティブユーザーを抱えるJDドットコムとの提携により、中国市場でのリーチを拡大できる。
同ブランドの親会社であるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、傘下の主要ブランドでオンラインショップを展開しているほか、傘下の百貨店ボン・マルシェ(LE BON MARCHE)が小規模なECサイト「24セーブル(24 SEVRES)」を手掛けているものの、ECにはあまり積極的でないことで知られている。アマゾン(AMAZON)が20年9月に公開したラグジュアリーブランドを取り扱うアプリ「ラグジュアリーストア(Luxury Stores)」は、LVMHが擁するブランドにも出店を打診したが、すげなく断られたという。
LVMHは4月13日に2021年1~3月期(第1四半期)決算を発表しており、売上高は前年同期比31.7%増の139億5900万ユーロ(約1兆8146億円)だった。売り上げ全体の41%が中国を含むアジア地域によるものとなっている。
ラグジュアリーブランドが中国のECプラットフォームに出店する際は、中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)が運営する中国大手EC「Tモール(天猫、TMALL)」や、その完全招待制のラグジュアリーECサイト「ラグジュアリー パビリオン(LUXURY PAVILION)」を利用するケースが目立つ。19年7月には「シャネル(CHANEL)」、20年1月には「カルティエ(CARTIER)」、21年1月には「エルメス(HERMES)」が出店している。
また20年11月には、アリババ、ラグジュアリーEC大手ファーフェッチ(FARFETCH)、そして「カルティエ」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)がグローバルな戦略的パートナーシップ契約を締結。提携の一環として、ファーフェッチはアリババの「ラグジュアリー・パビリオン」、同アウトレット専用プラットフォーム「ラグジュアリー ソーホー(LUXURY SOHO)」、同越境ECサイト「Tモールグローバル(TMALL GLOBAL)」に、ラグジュアリー専門のショッピングチャネルを開設した。
一方、JDドットコムが提携しているほかのブランドとしては、「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」「トッズ(TOD'S)」「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」などが挙げられる。