アディダス(ADIDAS)は4月15日、キノコの菌から作った人工レザー「マイロ(MYLO)」を用いた“スタンスミス”を発表した。来年には発売予定で、4月8日にオンラインで行ったプレスカンファレンスで明らかにした。
「マイロ」は無限に再生可能なキノコ類の地下根系である菌糸体(マイセリウム)から作られており、約2週間で成長する素材。現在、米国カリフォルニア州エメリービル拠点のバイオテックベンチャーのボルトスレッズ(BOLT THREADS)が運用している。ボストスレッズによると、最先端分野の農業技術を活用したプロセスにより、1平方フィート(0.09平方メートル)単位で増産可能な空間効率の高いシステムでこの菌糸体を育てることができるという。
アディダスは、カンファレンス終了直後に行った「WWDJAPAN」とのQ&Aセッションで、「マイロ」のケミカルリサイクル技術の研究も並行していることを明かしており、「アディダス」が掲げてきたモノ作りにおける“再生のループ”を自然由来の素材で実現する画期的な素材としても注目だ。
また、アディダスによると「マイロ」は柔らかくてしなやかな素材で汎用性が高く、多種多様な着色や仕上げ、エンボス加工にも対応できるという。一方で、菌糸体から作られた人工レザーは強度への課題もあるが、それに対しては「可能性を広げるために現在幅広く調査していて、段階的に素材やその機能性を変化させていければと考えている」と話した。
今回発表した“スタンスミス マイロ”は、アッパーの外側、パーフォレーション(穴飾り)を施したスリーストライプス、かかととベロ部分に「マイロ」を使用し、ミッドソールには天然素材のラバーを用いた。
アディダスのエイミー・ジョンズ・ベテラウス(Amy Jones Vaterlaus)未来グローバル担当責任者「『マイロ』の登場は、プラスチック廃棄物をゼロにするという当社の大きな目標に向けた大きな一歩だ。この惑星の住人として、私たちが学ばなければならないのは、自然にあらがうのではなく、自然と手を携え、革新的なソリューションを見つけるために、あらゆる努力をして、資源が回復する持続可能なペースでモノ作りを行う責任があるということ。“マイロ スタンスミス”は地球の生態系との相乗効果をはかることできるようデザインした」と話した。
一方、ボルトスレッズのジェイミー・バインブリッジ(Jamie Bainbridge)=バイスプレジデント・オブ・プロダクトディベロップメントは「アイコニックな“スタンスミス”のアッパーに『マイロ』を採用することにより、アディダスは、この革新的な素材の大きな可能性を示してくれた。イノベーションを実現するための開発パートナーシップを通じて、アディダスと提携していることに、私たちはとても興奮している。『マイロ』は現代に必要な実力と性能を兼ね備えている。これはフットウェアの開発を通じて、アディダスのチームからの助言や深い技術的な専門知識のおかげだ」とコメントを発表した。
なお、3月には「エルメス(HERMES)」が米新興企業マイコワークス(MYCOWORKS)と協働開発した菌糸体から作られた人工レザー“シルヴァニア”を用いたバッグを発表。今年中に発売する予定だ。“シルヴァニア”はエルメスのなめし工房で仕上げることで、強度と耐久性を高めている。同じく3月にステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)も「マイロ」を用いた衣服を2型発表している。