三井物産ケミカルは、化粧品のODM(相手先ブランドの企画・生産)のプラットフォーム構築に乗り出す。スキンケア、メイクアップ、ヘアケア、ボディーケアなどそれぞれの分野の国内有力ODMメーカーと組み、国内外の企業に化粧品の生産機能を提供する。中国をはじめ世界で注目を集める日本製の化粧品の事業拡大につなげる。
新規事業「Jビューティ・テクノロジープラットフォーム」を設立し、4月末から日本語、中国語、英語のウェブサイトでの営業活動を開始した。開発・生産機能を持たない化粧品メーカーや小売業、ファッションブランド、スタートアップ企業などを対象にする。企画提案、処方開発、原材料調達、生産、物流、販売まで、三井物産グループの世界的なネットワークを生かす。
提携するOEMメーカーは、昨年同社と資本提携したスキンケアに強いアンズコーポレーション(大阪、山田昌良社長)、メイクアップを中核にするアサヌマコーポレーション(東京、麻沼雅海社長)、ヘアケアを得意とする彩資生(埼玉、佐々木良逸社社長)、スキンケア、ヘアケア、ボディーケアなど幅広い領域を手掛ける東洋ビューティ(大阪、岩瀬史明社長)の4社。いずれも国内に自社工場と研究所を持ち、この4社で化粧品OEM(相手先ブランドの生産)・ODMの国内売上高の約2割を占める。三井物産ケミカルの石川和弘・新規領域開発本部長は「卓越した開発力のあるODMメーカーと組み、世界で戦える基盤を作りたい」と説明する。
商品開発にあたっては三井物産グループの三井情報(東京、浅野謙吾社長)および三井物産が出資する英情報分析企業ブラックスワン(BLACK SWAN)とも連携する。ブラックスワンはSNSの膨大な情報から人工知能(AI)を用いて商品やサービスの需要予測を行う。ディズニー、ペプシコ、ファイザー、ユニリーバ、サムスン電子などそうそうたる企業がブラックスワンの顧客に名を連ねている。
販売でも三井物産グループと取引がある海外の有力ドラッグストアなどの小売店、米国三井物産が2月から始めた日本製化粧品のEC(ネット通販)サイト「シコウビューティ(SHIKO BEAUTY)」の販路を活用する。
日本の企業だけでなく、海外企業からの注文も見込む。特に本命にするのが中国だ。「中国では日本製の化粧品、特にスキンケアの人気が強い。日本で開発・生産を行いたい中国企業の潜在需要はとても大きい」(石川本部長)。
三井物産グループは昨今、化粧品への投資を強めている。昨年11月には、三井物産の流通事業本部がメンズスキンケアのバルクオム(東京、野口卓也社長)、三井物産ケミカルがアンズコーポレーションへの出資を相次いで発表した。今年2月には米国三井物産が「シコウビューティ」を立ち上げ、米国でのECに参入した。三井物産ケミカルは主力である石油化学に依存しない収益構造の確立のための新規事業として化粧品事業を位置付けている。