ワコールは1日、オムニチャネル戦略促進を柱とした事業方針を発表した。オンライン・オフラインの融合と顧客データ活用による顧客体験の向上を目指す。22年3月期の新規顧客データの獲得目標として120万人(前期は80万人)を掲げ、5年以内に購入した顧客のデータを440万人(同360万人)に増やす。
同社は17年以降、オムニチャネル戦略の環境整備やサービス開発に毎年20億〜30億円を投資してきた。19年には5秒で体形を計測できる3Dボディスキャナーを導入、昨年はアバター接客「パルレ」を始めるなどデジタル革新を進めてきた。3Dボディスキャナーの計測者数は21年3月末で累計5万人以上、購買率は30%に達する。主に20~30代の新規顧客獲得につながっている。また、自社ECの21年3月期の売上高は、コロナ禍で前期比55%増の79億円と好調だった。
今後は、オムニチャネル戦略を「CX戦略」と名称を改め、経営資源を重点的に投じる。3Dボディスキャナーや「パルレ」に関しては、店舗の減少や接客を担当するビューティーアドバイザー(BA)不足などの問題の解消となると同時に、BAの働き方改革にも寄与。また、コロナ禍でソーシャルディスタンスが重要視される中、顧客がストレスなく購入できる選択肢の一つにもなっている。
1日にオンラインで行われた会見で伊東知康ワコール社長は、「昨年は新型コロナウイルスに翻弄された年だったが、成長するために必要なものや変革を進めてきたのでCX戦略は今後の力強いエンジンになる」と述べた。ワコールでは新宿伊勢丹本店のファッション売り場の“マッチパレット”というスタイリングサービス用に3Dボディスキャナーを提供するなど、異業種との協業も今後積極的に行なっていくという。
組織再編に関しては、エリアごとに全ての販売チャネルの管轄、ブランド価値の最大化と業務効率のための商品企画業務の統合、ブランドやチャネルを横断した投資や広告の最適化を目指したマーケティング業務統合などを行う。それにより、一人一人の顧客に対応し、利便性を高める柔軟な組織を目指し、より愛される商品作り、顧客に伝わる一環したマーケティングをしていく。