ファッション
連載 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」

草木染めとの出合い マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」Vol.16

今回は、連載を重ねながら説明が遅れている私のブランド「パスカル マリエ デマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS、以下PMD)」の取り組みを話したい。

「PMD」はブランド設立当初から、美容脱毛サロン「ミュゼ プラチナム」や制作会社の受付など、さまざまな企業のユニホームデザインを手掛けてきた。中でも、「東京ミッドタウン日比谷(TOKYO MIDTOWN HIBIYA)」内のレストラン「ドローイング ハウス オブ ヒビヤ(DRAWING HOUSE OF HIBIYA)」のユニホームデザインは、大きなターニングポイント。

草木染め(ボタニカルダイ)に挑戦したからだ。

草木染めは、日本や中国、ヨーロッパなどで昔から行われてきた染色の技法だ。私はこのプロジェクトがきっかけで、染料の原料である草木が大量に捨てられている現状を知った。そして、大きさや形が整っていない規格外の野菜や、ヘタなど食材として使われない部分を染料として使うことで無駄を減らし、循環率を上げられることに気付いた。草木染めは、人の肌にも良い効果をもたらす。例えば、化学染料と生姜で染めたTシャツを比べると、色はどちらもほぼ同じ黄色だが、着用すると生姜で染めた洋服の方が体温が上がるのだ。

「東京ミッドタウン日比谷」のオープンが桜の季節だったこともあり、「ドローイング ハウス オブ ヒビヤ」のシャツとシェフウエア、エプロンは、桜の花びらで染めてデザインした。エプロンは好評で、消費者から「売ってほしい」と問い合わせが殺到したのはうれしかった。

この経験から、私は食品廃棄物に注目するようになった。その後手掛けた「カルディコーヒーファーム(KALDI COFFEE FARM)」の顧客満足度1位の店舗のために特別にデザインしたエプロン(写真で着用)や、神奈川・鎌倉山の老舗蕎麦屋「らい亭」の夏の前掛けでは、その土地で出た廃棄物や出がらし、店に咲く紫陽花を染料に使った。

普段から自宅の生ゴミをコンポストして、その堆肥で野菜を育てている私にとって、使われなかった食品は全てせつなくて美しい。美しさは、誰かが示した物差しで測れるものではない。皆さんにも、いつか私が手掛けたこれらのプロダクトに出合ってほしい。そして、食するものとその空間全てを吸収して笑顔になってほしい。

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