ファッション
連載 コレクション日記

「シュプリーム」噂のミラノ新店から「エトロ」のリアルショーまで 2022年春夏メンズコレ現地突撃リポートVol.2

 2022年春夏シーズンのコレクションサーキットが本格開幕した。ほぼデジタル発表だった前シーズンから世界の状況は少しずつ好転し始めており、リアルでのショーやプレゼンテーションを開催するブランドも増えた。パンデミックを経て街はどう変化し、ファッション・ウイークはどう進化しているのか。現地からリポートする。

 ボンジョ〜ルノ〜!ミラノメンズ取材2日目は曇り、最高気温32度。私の体温は36.5度の平熱で今日も元気ハツラツです。午前中は予定がないため、お気に入りのカフェの朝食で1日をスタートさせました。向かったのは、今年2月にオープンした「ロステ カフェ(Loste Cafe)」。フォカッチャやシナモンロール、クロワッサンなど数種類のパンを提供するカフェで、デンマークにある伝説級レストラン「ノーマ(Noma)」でヘッド・ペイストリーシェフを務めたデンマーク人の方がパンを作っています。ここのカルダモンのデニッシュがサイッッコウなんです!パリッとした薄い生地が何層も重なった外側と、フワフワの内側の食感のコントラストが楽しめ、噛めば噛むほどに広がる新鮮なカルダモンの香り――ああ!朝からしっかりエナジーチャージできたので、今日の“現突リポ(現地突撃リポート)”も頑張っちゃいます。

12:00 「エトロ」

 私にとっていよいよ今季最初のショーとなる「エトロ(ETRO)」です。会場は、街の外れにある普段は立ち入り禁止の廃線跡。同ブランドのショー会場ではいつも素敵なおみやげが用意されているので楽しみにしていたら、今回は妖艶な草花柄のクッションでした。そして配られたお水のパッケージと、今日のドレスの色が見事にマッチ!以心伝心したみたいでテンションも上がります。

 ゲストの数は約160人で、ほぼイタリア人だと現地のプレス担当者が言っていました。日本人で見かけたのは、イタリア在住の通信員の方々やジャーナリストのマスイユウさん(写真撮り損ねたので明日は必ず!)。「エトロ」に身を包むインフルエンサーやダンサー、シャツドレスをシックに着こなす百貨店「リナシェンテ(Rinascente)」のバイヤーさん、売れっ子モデルの アルトン・メイソン(Alton Mason)らの写真を撮っていると、ほぼ定刻通りにショーが始まりました。

 ストリートウエアにシフトした前シーズンからは変化し、ブランドを象徴するノマド(遊牧民)の精神へと回帰したようなヒッピームード満点!犬井ヒロシの「自由だーーー」というネタ(古っ)と同じくらい、声高らかに自由を叫びながら開放感を満喫しているようなスタイルでした。今季のテーマは “Travelling in a Joyful State of Grace(喜びに満ちた恵みの旅)”。シグネチャーである草加柄やペイズリーはもちろんのこと、日の出のようなオレンジのグラデーション、生き生きとした木々のグリーン、澄み渡る空のブルーは自然の恵みへの感謝を衣服で表現しているように見えました。そこに、メタリックのコーティングを施したビビッドカラーのボトムスが加わることで、ブランドの真骨頂である生命力がされにみなぎっていきます。後半は一転して落ち着いたトーンに切り替わり、無地のコートは無骨なコンクリートのようで、刺しゅうが施されたボンバージャケットやテーラードジャケットなどでアーバンなボヘミアン。人工的な線路と、そこにたくましく生い茂る草花をランウエイに、自然と都会を自由に遊牧するショーでした。最後はメンズのクリエイティブ・ディレクター、キーン・エトロ(Kean Etro)が阿波踊りのような動きで超ハイテンションに登場!

13:30 ディエチ コルソ コモ

 今日はアポイントメントの合間にショップ巡りをします。2月にミラノを訪れた時、老舗セレクトショップ、ディエチ コルソ コモ(10 CORSO COMO)はスペースの3分の1をギャラリーに変えていましたが、今回訪れると元に戻っているではないですか。取り扱いブランドに変化は見られませんが、「メゾン アライア(MAISON ALAIA)」の商品が減り、代わりに「セシル バンセン(CECILE BAHNSEN)」のドレスと「ロエベ(LOEWE)」のバッグが増えていました。うーん……客足は少なめ。

14:00 「プラダ」

 コルソコモに併設されたカフェに入って、「プラダ(PRADA)」のデジタル発表をリアルタイムで見ました。今季はついに屋外へと出ましたね。モデルたちは曲がりくねった赤いトンネルを抜け、美しいビーチを歩きます。極短レングスのスイムウエアで露出をしているのは、肌着風のアイテムやグローブで肌を覆っていた前シーズンまでの反動なのかな。シルエットはシャープに削ぎ落とし、ラフ・シモンズ(Raf Simons)加入後最もミニマルな印象を受けました。その分、肩がけバッグや装飾付きのシューズ、サンゴ礁のような形のジュエリーなどアクセサリーに目が引かれ、サングラス付きハットの構造も気になります。明日の展示会でしっかりチェックしてきますね!

14:30 アントニオーリ

 雨がパラついててきたので電車移動。電車内では2席空けるソーシャルディスタンスがしっかり守られていました。運河沿いにあるセレクトショップ、アントニオーリ(Antonioli)に入ると、アパレル以外にも自宅に飾るオブジェが新たに加わっています。ヘアブラシに髪の毛がついた(!?)ちょっと不気味なアートやライトを使ったオブジェが数種類あり、ホームフレグランスやディフューザー、キャンドルもそろっていました。おうち時間の増加による需要なのでしょうね。ただ、店内の客は私だけ。

15:00 「エルメネジルド ゼニア」

 次は、6月18日にデジタル形式で発表した「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」の展示会です。事前にアレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)=アーティスティック・ディレクターにZOOMインタビューしていた分、実際に見て触れられるのを楽しみにしていました。以前から「エルメネジルド ゼニア」の取材をしてきた編集の大塚さんが「昨年の『フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)』との協業以降、イージーフィットのスタイルがグッと洗練された」と言っていたのに同感で、リラックスしているけれど洗練されていて、フォーマルに仕上げるバランス感が絶妙でした。今季のキーワードは“流動性”と“軽さ”。これは生地のことだけではなく、テーラリングを現代のニーズに合う新たな型で考案したコンセプトです。

 上質な生地に触れて、驚きと感動でお腹いっぱい胸いっぱい!圧倒されました。なかでも、一見ラムレザーのようなコートが、実は超絶柔らかいウールなことに一番驚きました。身長152cmの私が着ると魔女みたいですが、颯爽とカッコよく着られます。インタビューや展示会の詳細については別記事でリポートするのでお楽しみに。

16:00 シュプリーム

 5月上旬にオープンした、「シュプリーム(SUPREME)」のイタリア初の旗艦店へ行ってみました。同店は、2020年にVFコーポレーション(VF CORPORATION)による買収後、新体制となって最初に出店した店舗です。店内の写真撮影がNGのため外観だけですが、入り口に大きなオブジェがあり、壁に沿って商品が並んでいるという他店と同じ内装。入り口には屈強な男性が立ち、来店客は混雑するほどではないですがパラパラいました。同店限定アイテムは完売で、そのほかは他店と変わらず特筆することは別にナシ。この後、近くに位置するスラム ジャム(SLAM JAM)にも行きましたが、1度に1組の客しか入店できないルールで諦めました。雨ですし。

17:00 「サントーニ」

 本日最後は、1975年創業の高級シューズブランド「サントーニ(SANTONI)」のプレゼンテーションです。ミラノメンズはここまで、“自然”や“旅”をテーマに取り入れたブランド多数でしたが、「サントーニ」も同様です。「新しい世界へのドアを開ける今、どんなシューズが必要か?」という自問によって制作されたコレクションとのこと。ハンドペインティングによる色の濃淡をつけたローファーやスニーカー、バッグが並んでいました。グリーンとレンガ色を組み合わせたシューズは個性的ですが、履きこなすには難易度が結構高そう。初日の「トッズ(TOD’S)」や「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」でも見られたような、淡いグレーやサンドカラーといった色のニュアンスが、今季のムードを象徴しています。他の色との合わせやすさと、優しい雰囲気や繊細さを求める心理が背景にあるのかも。会場ではどこでもドア風のインスタレーションも設置。私は2年も帰国していないので、どこでもドアがあればすぐにでも日本に行きたい!

本日のジェラート

 さあ、本日の任務は終了したのでお待ちかねのジェラートタイム。「プラダ」傘下の老舗洋菓子マルケージ(MARCHESI)に行き、ドゥオーモに立ち寄るのが私のミラノでの定番コースです。これまでに8種類の全フレーバーを制覇済みで、ピスタチオとヘーゼルナッツがトップに君臨しています。店内もドゥオーモ周辺も、2月に来たときより断然活気があっていてうれしい!そんな明るい気分で2日目が終了しました。明日はミラノメンズ取材最終日、楽しみながら取材を続けます!

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