ジュエリーブランド「アーカー(AHKAH)」の創業者である福王寺朱美が6月4日、東京・表参道で個展を行った。テーマは「フューチャー ゼン(未来の禅)」。会場には水晶や宝石で作られたアート作品や枯山水を展示し、テーマの世界観を表したショートフィルムを上映した。「アーカー」で長年ジュエリーのクリエイションに携わってきた福王寺に、これらアート作品に込めた思いを聞いた。
WWD:宝石を使用してアート作品を作ろうと思ったきっかけは?
福王寺朱美(以下、福王寺):宝石鑑定士の資格を持っていて、ジュエリーブランドに携わってきたため水晶や鉱物が身近にあった。それらの美しさをよく知っているし、その美しさを作品で表現できればと思った。石を使って、より美しいものを作りたいと思った。作品を通して、自分が考えていることや、今後やっていきたいことを伝えたいという思いもある。
WWD:テーマを「フューチャー ゼン」にしたのは?
福王寺:禅というと宗教的だと思われるかもしれないが、「未来の禅」とは、宗教や国境がない解放された世界のこと。苦しかったときに座禅に行ったことがある。毎日瞑想し、辿り着いたのが平和な心だった。感謝の気持ちや大切なこと、純粋な幸せ、それらの本質を色とりどりの鉱物で表現できたらと思った。石には崇高な力があるし、水晶は気持ちを浄化してくれる。作品を通して、それらを共有したい。
WWD:蒔絵作家の箱瀬淳一とコラボレーションしようと思ったきっかけは?
福王寺:以前もコラボレーションをしたことがあったし、日本の伝統工芸である蒔絵を取り入れることで、国境を超えた日本の素晴らしさを伝えたかった。蒔絵の工房を探していたときに辿りついたのが箱瀬先生の工房だった。先生と何度も話をして少しずつ形にしていった。
職人と二人三脚で作りあげる作品
WWD:制作のプロセスは?一番苦労した点は?
福王寺:イメージを描いて、職人と二人三脚で作り上げていった。職人に初めてのチャレンジをたくさんしてもらった。私の思いを伝えて一生懸命頑張って完成したときは職人から「最高の仕事をありがとう」と言われ感動した。苦労したのは、水晶に蒔絵を施すとき。石の屈折率など考えなければならなかった。箱瀬先生に「キャンバスの裏に絵を描いて、表から見えるように」と難題を出したり……。彼から「不思議な空間に立つオベリスクのようで興味深い」と言われたときはとてもうれしかった。
WWD:これらの作品を見る人に何を感じて欲しいか?
福王寺:魂を込めてつくったので、一人一人、自分の中にある純粋さ、崇高さを感じて欲しい。心が洗われたり、幸せを感じてもらえたり、笑顔になってもらえるとうれしい。
WWD:これからチャレンジしたいことは?
福王寺:建築家をはじめさまざまな人とコラボレーションして自分の美術家としての世界観を広げて行けたらと思う。ジュエリーブランドの経営者は卒業したので、ただ美しいものを追求して作っていきたい。