「擬人化」には本音が潜む
リニューアルが奏功しなかった「ラブレス」は三陽商会の中でも厳しい状況が続いていましたが、ニュウマン横浜店の片桐副店長の記事には心が洗われました。いやぁ、頑張ってる!素直に応援したいな、って思います。
気づけば片桐副店長より若いショップスタッフは、もはや自分の“子ども世代”(いや、子どもいないですけれどw)、ゆえに彼らに対してナゾだし「有難迷惑じゃなかろうか?」なんて思う親心が芽生えるという心境の変化を、素直に楽しんでいる自分がいます。学生あがりのデザイナーの洋服を見て、「ここの縫製、ガッタガタだけど、オーダーしたるわ!」と声をかけたのは今までで3回。一生懸命なスタッフの接客を受け、心の中で「両方、買うたろうやないか!」とエセ関西弁(こういう時、関西弁で話をしたくなるのはナゼでしょう?)で言い放ちカード払いしたことは十数回。正直ピンと来ない洋服が並ぶ展示会で「半年後に、コレを売る、あの子たちのコトを考えてあげてよ」と思ったことは数十回。私は一体、何者&何様でしょうか(笑)?でもまぁ、こういう気持ちが芽生えるのは、悪いコトじゃないと思っています。あと十年もしたら、日本全国に子どもがたくさんです(笑)。
「擬人化」ならぬ、「擬子化」とでも言えば良いのでしょうか?ず~っと売れ続ける定番を「(世話のかからない)健気な子」と評するビューティPR、イチ押しについて「この子を紹介させてください!」と教えてくれるファッションプレスなど、業界には愛の深さゆえ「擬人化」「擬子化」の傾向があるというお話は、以前もさせていただきました。その時比較の対象として紹介したのは、料理研究家の「ニンジンちゃんを切ってあげましょうね~」なんて言葉。その昔ナンシー関は、こういう材料の「擬人化」「擬子化」を「本来なら、『ニンジンを切れ』などの命令の連続で構成される料理番組をフレンドリーに見せるため」と分析していましたが、ファッション&ビューティ業界PRの「擬人化」「擬子化」は、それとは大きく異なります。純粋な“愛”なのです。ゆえに記者として、こういう言葉にはアンテナを張り、「擬人化」「擬子化」にまで至った真相を探索しなければと思っています。
そして、これも以前お話したかもしれませんが、冒頭のピンと来ない洋服が並ぶ展示会で「半年後にコレを売る、あの子たちのコトを考えてあげてよ」と思った私の隣で、ある業界人は、もっとズバッと本質を突く「擬人化」「擬子化」のセンテンスを口にしました。
「糸に戻してあげたい」。
ん~、重い。「擬人化」「擬子化」を超えた「擬胎化」とでも呼ぶべきでしょうか?でも、これだって愛の証ですよね?こうした言葉には、やっぱり真理が潜んでいるのです。
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