ファッション

2つの世界の美しく力強い融合 「サカイ」阿部千登勢が手掛けた「ジャンポール・ゴルチエ」のオートクチュール

 「サカイ(SACAI)」の阿部千登勢をゲストデザイナーに迎えた「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER 以下、ゴルチエ)」の2021-22年オートクチュール・コレクション「ゴルチエ パリ バイ サカイ(GAULTIER PARIS BY SACAI)」が、1年の延期を経て、7月7日に発表された。会場は、同メゾンの本社。数々のアイコニックなデザインを生み出してきた「ゴルチエ」と、ハイブリッドスタイルで日本から世界へと羽ばたいた「サカイ」という2つの世界が共鳴するように溶け合い、美しく力強いコレクションが誕生した。

 「今回手掛けるにあたって、ゴルチエさんのDNAや良さを残したいと思った。20代の頃から彼のコレクションが大好きで、意識したのは、そのハッピーな感じと既成概念を壊すという”自由さ”。ただ、昔の『ゴルチエ』と同じということではなく、あくまで『サカイ』らしく、そして2021年の今に合った洋服にしたかった」。そう阿部デザイナーが話すように、披露した31体はマリンボーダーやコルセット、コーンブラといったゴルチエのエッセンスとアトリエの力を生かしながら、異なる要素のハイブリッドや軽やかで透け感のある素材使い、手の込んだケーブルニット、立体的なシルエットなどで「サカイ」らしさを表現している。

 例えば、ファーストルックのピンストライプのコルセットドレスには、同柄のオーガンジーで仕立てたオーバーサイズシャツを組み合わせ、そこにコーンブラをアレンジしたビスチェをプラス。トレンチコートはバッスルやテントのようなシルエットで再解釈し、テーラードのコートドレスにはフェティッシュなレースアップでボンバージャケットのパーツをドッキングする。また、フェイクファーと「JPG」のマークをあしらったアウターは、阿部デザイナーの記憶に強く残っていた1994-95年秋冬のショーショーでビョーク(BJORK)が着用したジャケットを参考にしたもの。デニムアイテムは「リーバイス(LEVIS)」の古着をアップサイクルし、マリンボーダーやタータンのドレスはテープ状にカットした切りっぱなしのサテンやチュールを重ね合わせている。

 ラスト2ルックは、ブルーのワークウエアをサテンと組み合わせて、ドレスライクにアレンジした。その足元を飾るのは、「ナイキ(NIKE)」とのトリプルコラボによる”LD ヴェイパー ワッフル(LD Vapor Waffle)”。ショー直後から「ゴルチエ」の公式サイトで開始した先行オーダーは即完売状態になり、9月末の発売時にも話題を集めることは間違いないだろう。

 多くのルックに取り入れたセカンドスキントップスやレギンスのタトゥープリントは、「サカイ」でもコラボレーションしているタトゥーアーティストのドクター・ウー(Dr. Woo)が描いたもの。ヘアはグイド・パラウ(Guido Palau)、メイクはダイアン・ケンダル(Diane Kendall)、音楽はミシェル・ゴベール(Michel Gaubert)、シューズはピエール・アルディ(Piere Hardy)と、これまでの「サカイ」のコレクションでも一緒に取り組んできた顔ぶれが脇を固めている。

 今回のコレクションはコロナ禍に4回渡仏して作り上げたもので、「渡航のたびに隔離しなければならず大変だったけれど、ZOOMでのやりとりでは決して作れなかった」と阿部デザイナー。初めてのクチュール制作については「私たちは常にたくさんじゃなくていいからスペシャルな服を届けたいと思っていて、『サカイ』の服も大量に生産して売るようなものではない。けれど、今回のオートクチュールは、その究極の形。本当に好きなように作らせてもらって、とても楽しかった」と、清々しい表情で話す。

 一方、ゲストの一人としてショーを見守ったゴルチエは「質問があれば答えるよという感じで、あとは完全な自由を与えた。自分が関わり始めると、ついついコントロールしたくなってしまうからね(笑)」と説明。また、今回の人選については、「最初のゲストデザイナーとして『サカイ』の千登勢を選ぶのは、とても簡単だった。自分の後にコレクションを手掛ける一人目は女性にしたいと思っていたし、彼女のクリエイションには自分がこれまでやってきたことと共通する部分が多い。同じスピリットを持ちながらも、彼女らしい新たな方法でエネルギーをもたらしてくれた。とても喜ばしいことだ」と笑顔で語った。

 なお、ゴルチエは20年1月にランウエイを引退。今回から、毎シーズン異なるゲストデザイナーを迎えてオートクチュール・コレクションを発表する。来シーズンの人選は、まだ明かされていない。

JEAN PAUL GAULTIER x コレクションの記事

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

疾走するアシックス 5年間で売上高1.8倍の理由

「WWDJAPAN」11月4日号は、アシックスを特集します。2024年度の売上高はコロナ前の19年度と比べて約1.8倍の見通し。時価総額も2兆円を突破して、まさに疾走という言葉がぴったりの好業績です。売上高の8割以上を海外で稼ぐグローバル企業の同社は、主力であるランニングシューズに加えて、近年はファッションスニーカーの「オニツカタイガー」、“ゲルカヤノ14”が爆発的ヒットを記録したスポーツスタイル…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。