日本のアパレル産業の“ハブ”として、原料から企画デザイン、生産、物流までをカバーしてきた繊維商社が大きな岐路を迎えている。同業同士の統合や買収など、大掛かりな業界再編が動き出す中、繊維商社は今後どういった針路へ進むのか。繊維商社出身で、ターンアラウンドマネジャー(再生請負人)として数多くのアパレル・小売企業の再生を手掛けた河合拓氏に聞いた。
WWDJAPAN:繊維商社を取り巻く影響は?
河合拓(以下、河合):現在の日本のアパレルは、約30年間続いてきた構造的な問題に起因した深刻な不況下にある。一言でいえば、オペレーション偏重主義による戦略軽視だ。1990年代から市場が30%も縮小している中で、供給量は20億点から35億点(2020年度)まで倍増し、衣料品の購入単価も一世帯あたり30%程度下落した。そうした状況にもかかわらず、日本のアパレルや小売りのトップは本質的な競争力やグローバル化に手を入れることなく右肩上がり、よくて昨対比維持の数字を策定し、その達成に邁進してきた。アパレル企業は縮小する市場で無理に売り上げを上げようとするため単価を下げる、単価を下げるために原価を切り詰める。一方商社は、そうしたコストプレッシャーから中国やASEANなど、生産コストが低い国へと移動を続けた。しかし、果てしないコスト競争がいつまでも続くわけがない。コロナ禍とSDGsの広がりで、歪みが一気に顕在化、逆回転を始めているのがアパレル不況の原因だ。そうした現状に向き合い、商社としてトレード以外に何ができるのかを考えてこなかった商社と、将来を読み業態を大きく変えた商社で、明暗差がついている。
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