ビジネス

LVMH、21年上半期は55%増収 コロナ禍以前を上回る業績

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の2021年1~6月期決算は、売上高が前年同期比55.8%増の286億6500万ユーロ(約3兆6977億円)、営業利益は約5倍(同400.8%増)の75億9800万ユーロ(約9801億円)、純利益は約10倍(同913.2%増)の52億8900万ユーロ(約6822億円)の大幅な増収増益だった。

 なお、19年同期比でも売上高は14.2%増、営業利益は44.9%増、純利益は61.8%増とコロナ禍以前を上回る業績になった。

 部門別の売上高では、主要事業のファッション・レザーグッズ部門が記録的な伸びを見せ、前年同期比73.5%増の138億6300万ユーロ(約1兆7883億円)だった。スターブランドの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「ディオール(DIOR)」に加えて、「フェンディ(FENDI)」「ロエベ(LOEWE)」「セリーヌ(CELINE)」も非常に好調で、業績に大きく貢献した。

 20年12月に総額158億ドル(約1兆7380億円)で買収したティファニー(TIFFANY & CO.)を擁するウオッチ&ジュエリー部門は、同205.0%増の40億2300万ユーロ(約5189億円)と約3倍の伸びとなった。ワイン&スピリッツ部門は同36.2%増の27億500万ユーロ(約3489億円)、香水&コスメティクス部門は同31.2%増の30億2500万ユーロ(約3902億円)だった。免税店のDFSや化粧品のセレクトショップ、セフォラ(SEPHORA)などを運営するセレクティブ・リテール部門は、同4.9%増の50億8500万ユーロ(約6559億円)だった。

 19年同期との比較では、ファッション・レザーグッズ部門の売上高が32.9%増、ウオッチ&ジュエリー部門は同88.4%増、ワイン&スピリッツ部門は同8.8%増となった一方で、香水&コスメティクス部門は同6.5%減、観光客不在の影響が長引いているセレクティブ・リテール部門は同28.3%減となっている。

 ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者は、「世界中が危機的な状況にある中でも、事業への投資やイノベーションを継続してきた結果として、素晴らしい業績を上げることができて大変うれしく思っている。上半期のハイライトは、グループ内への『ティファニー』の統合と、大規模なリノベーションを行っていた百貨店サマリテーヌ(LA SAMARITAINE)の営業を再開できたことだ。事態が落ち着き、世界経済が復活の兆しを見せている現在、当社は今後も成長を続け、グローバルなラグジュアリー市場をけん引するリーダーとしてのポジションをさらに強化できるものと確信している」と語った。

 コロナ禍が落ち着き、外出や旅行などが可能になるにつれて、ラグジュアリー消費の比重がモノからコト(体験)へと移るのではないかと見る専門家も多い。これについて、ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)最高財務責任者(CFO)は、「中国のトレンドを注視しているが、現在のところそうした傾向は見られず、需要は減速していない。こうしたことから、旅行などができるようになっても、ラグジュアリーのモノ消費とは“別の財布”からの支出になるのではないかと希望を持っている」と述べた。同氏はまた、中国市場での業績は大変好調だが、売り上げに占める中国人顧客の割合は増加しておらず、中国への依存度は高まっていないと付け加えた。

 21年1~3月期(第1四半期)決算発表の際、検討している買収案件はあるかと問われたギヨニーCFOは、「ほかにやるべきことがある。現在は『ティファニー』をグループ内に統合し、長期的に成長させていくことが最優先事項だ」と答えている。しかし、ティファニーほどの大規模な案件ではないものの、LVMHはその後も投資を続けている。21年4月にはトッズ・グループ(TOD'S GROUP)の持ち分を10%に引き上げ、7月には過半数株式を保有する「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」の全株式を取得して完全子会社化。同じく7月には、17年に「セリーヌ(CELINE)」を去ったフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が自身の名前を冠したブランドの立ち上げを発表したが、LVMHはその少数株主となっている。また、やはり7月には、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が率いる「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の商標を所有するオフ-ホワイト合同会社(OFF-WHITE LLC)の株式60%を取得した。セフォラも、英ビューティE Cの「フィールユニーク(FEELUNIQUE)」を買収すると発表した。

 英金融機関HSBCのアーワン・ランバーグ(Erwan Rambourg)=コンシューマー&リテール・リサーチ・グローバルヘッドは、「現在は全般に企業のマルチプル(財務指標や企業価値などに基づいて算出した評価倍率)が高い売り手市場だが、LVMHほどの資金力があれば、今後も投資を続ける可能性がある」とコメントした。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。