ここ数シーズンで、“性別にとらわれないビューティ”がトレンドになってきた。2015年ごろから “ジェンダーレス男子”など、従来のジェンダー規範にとらわれないトレンドは台頭してきたが、最近の流れはそれよりも自然体で、さらにしなやか。性別を超えた、“気張らない自分らしさ”を表現することが支持を集めており、そうしたオピニオンリーダーをサポートするような広告表現も世界的に広がっている。(この記事はWWDジャパン2021年7月26日号からの抜粋です)
これはSNSの広がりから、今まで胸の内に秘めていた自分の性表現や意識を、より具現化できるようになったことが大きい。性表現の起点は、見た目の女性らしさ、男性らしさにあるが、現在はその区別があいまいになっているだけでなく、最近では“自分が女性である”“自分は男性である”といった“性自認”という概念が付加。先日、宇多田ヒカル氏が自分を“ノンバイナリ―”だとカミングアウトしたが、これは性自認に男性、女性といった枠組みがあてはまらない考え方で、セクシャリティだけではなく、性表現も“自分らしく”することが鮮明になりつつある。加えて、欧米では、男性性と女性性のどちらも流動的に表れる“ジェンダーフルイド”といった個性も認知されはじめており、もはや性別は肉体的な違いだけになり、本人の“性属性”は性自認や性的志向によって語られる時代になりつつあるのかもしれない。
そう考えると、メイクアップは、単に“ジェンダーフリーで使える”といったアピールではインパクトが弱くなる。
男性はよりイケメンに、女性はより美人に、という考えはあるものの、より複雑化していく性属性や個性に対して、多様性や包括性のあるメイクを提案できることが、ブランドの感性価値となるだろう。
しかも、消費者にとっても、そのような表現が充実すれば、自らの性自認や性的志向を、見た目でどう表現すればいいのか悩んでいる人々にとってヒントになる。自分らしいメイク、自分らしい外見を手に入れることで、より多くの人が自己肯定感を育めるようになるはずだ。
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