イタリアのファッション業界で大再編が始まった。エトロ(ETRO)は2021年7月18日、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)系の投資会社、Lキャタルトン(L CATTERTON)に株式の60%を5億ユーロ(約645億円)で売却。本件に近しい金融関係者が、米「WWD」にこれを事実と認めた。エトロはこれまで一貫して身売りはしないと公言していたが、今年4月には「ビジネスの将来的な成長のため、提携の可能性などを検証している」とコメントしていた。
7月20日には、エルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP以下、ゼニア)が、ニューヨーク証券取引所に上場するためにインベストインダストリアル・アクイジション(INVESTINDUSTRIAL ACQUISITION CORP.)と最終事業契約を締結した。インベストインダストリアル・アクイジションは、特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Corporation、SPAC)と呼ばれる、特定の事業を持たない、株式の未公開企業の買収を目的に設立する上場会社だ。同社がゼニアを買収することで、事実上、ゼニアが上場したこととなる。取引完了後も、ゼニア一族が約62%の株式を保有し決定権を維持する。
創業者一族が過半数株式を保有しているイタリアのブランドといえばミッソーニ(MISSONI)だが、創業者の長女で、24年にわたってクリエイティブ・ディレクターを務めてきたアンジェラ・ミッソーニ(Angela Missoni)社長は今年5月に退任した。引き続き社長として同社に関与するとのことだが、新クリエイティブ・ディレクターは創業家から選ばず、アンジェラの右腕を12年間務めてきたアルベルト・カリーリ(Arberto Caliri)が暫定的に就任した。
1920年代にイタリアで靴の製造を始めたことに端を発するトッズ・グループ(TOD'S GROUP)も、やはり創業者一族が過半数株式を保有しているが、2021年4月には以前から同社の株式を3.2%保有してきたLVMHにさらに6.8%を売却した。
上述はいずれもイタリアが誇る、長らく一族経営を続けてきたブランドだ。しかし、市場がよりグローバルになって以前よりも急激に変化していること、一族の中で世代交代の時期に差し掛かっているケースが散見されること、またコロナ禍の影響などから、今後しばらくは買収や再編が続くのではないかと見る関係者も多い。
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