ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、自店の強みを発揮して存在感を増す百貨店の話。
【賢者が選んだ注目ニュース】
松屋・秋田正紀社長×三原薫子バイヤー化粧品ならではの体験価値を
京王百貨店の化粧品売り場専用アプリが使いやすい」と話題
WWDJAPAN7月19日号「百貨店のミライを語ろう」は、百貨店出身者として非常に興味深い特集だった。すでに1年以上、過去最大の苦境におかれている百貨店各社が、店頭・デジタル・外商など各社の強み(とトップが考えている)部門で生き残りを賭けて取り組んでいる状況を捉えることができた。特に松屋銀座の化粧品の若手バイヤー・三原薫子氏と社長・秋田正紀氏のインタビューからは、「〇〇戦略」といったパワーワードではなく自らの言葉が語られ、現場に近い場所からのリアルな声が伝わってきた。
クリエイターのストーリーを伝える松屋銀座
松屋銀座は、1930年代から隣の銀座三越と長く切磋琢磨し、差別化を図り続けてきた。近年では松坂屋がギンザ シックスとなり、加えて東急プラザのオープンなど、インバウンドの急増を受けて勢いを増す商業施設に囲まれる形となった。しかし、周辺環境の急激な変化に慌てて追随することなく自社の得意分野を磨き続けて現在に至っている。各百貨店が文化事業を縮小する中、美術館・ギャラリー展示を継続。カルチャー・デザイン・ライフスタイル系の催事に強みを持つほか、「タツノコプロ展」「エヴァンゲリオン展」といったアニメ・マンガの作品展にも力を入れている。
かつて三原バイヤーも携わっていたという自主編集コーナー「リタズダイアリー」では、新進デザイナーの雑貨・ファッションをセレクトし、リアルな接点の場を提供し続けている。松屋銀座に貫かれているのは、クリエイターの持つストーリーを伝えようとする精神であるように思う。百貨店のクリエイターを育成する時間と体力は底をつき始めているのが現状だが、ポップアップショップで場所を与えるだけでなく、クリエイターを発掘してブランドを育てるインキュベーターとしての役割を、松屋銀座には特に期待したい。
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