今、コスメ業界では次々と“金木犀の香り”の新製品が登場している。8月20日に「フローラノーティス ジルスチュアート(FLORA NOTIS JILL STUART)」から金木犀が甘美に香る“スウィートオスマンサス ソリッドパフューム”(数量限定)が、同24日に「べキュアハニー(VECUA HONEY)」の“ワンダーハニーシリーズ”から金木犀の香りのコスメアイテム(数量限定)が、同25日に「オサジ(OSAJI)」の金木犀をイメージした香り“オスマンサス”シリーズからヘア&ボディーケアアイテム(数量限定)が登場。ほかにも複数のブランドが金木犀関連製品を発売している。
金木犀は、一般的に9~10月に開花する秋の花。そのためこの時期に限定アイテムとして登場することが多いが、ここまで出そろうことは異例だ。
“芳香剤の香り”というイメージも強いが、コスメ業界では、以前から「オゥパラディ(AUX PARADIS)」が金木犀の香りのフレグランスを発売していた。しかし話題になったきっかけは「シロ(SHIRO)」だろう。同ブランドは2018年、金木犀の香りを表現したアイテムを発売。その好評を受け、定期的にオードパルファンやヘアオイルなどの製品を発表し、金木犀の香りを人気シリーズに育て上げた。SNSでも話題となり、完売する限定品も多い。今年もファンの期待に応え、2月に限定フレグランス“キンモクセイ オードパルファン”を発売した。
香りを文字で表現することは非常に難しい。しかし「シロ」は、金木犀の香りを“モモやアンズなどの果実を思わせるフルーティさと、上品な甘さの中にほんのりと甘く香る洋酒のようなアクセントが印象的で、どこかノスタルジックなムードを感じる香り”と、とても巧みに表現している。“どこかノスタルジックなムード”を感じる人は多いようで、金木犀の香りを「エモい」と評する美容師も少なくない。
今年に入ってからの新たな動きとして、1月に「ルイ·ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が金木犀をメインノートとして初めて採用したウィメンズ·フレグランス“エトワール フィラント”を発売し、「ロクシタン(L'OCCITANE)」が金木犀の香るフレグランス“オスマンサス”シリーズを9月に発売する。グローバルブランドが着目し始めたことで、さらなる広がりを見せるかもしれない。
トレンド発信源はスタイリングオイル
もう1つの動きとして、金木犀の香りのトレンドは、ヘアサロン業界にも波及した。中心となっているのは、サロン専売品ブランド「トラック(TRACK)」だ。人気のスタイリングオイル“トラック オイル”は“ナンバーワン”から“ナンバースリー”まで3種類あり、“ナンバースリー”が金木犀の香りだ。おしゃれなボトルデザインやオイルの性能も人気の秘訣だが、「“ナンバースリー”がダントツに売れている」(同ブランド広報)ので、やはり香りが最大のヒット要因だろう。
「“トラック オイル ナンバースリー”はインスタグラムで話題となり、生産が追い付かないほど売れている。今現在は、1日に100件ほどの問い合わせをいただいている。人気のポイントはやはり金木犀の香りで、SNSを見ていると『金木犀の香りの再現度が高い』と評価してくれている投稿をよく目にする」と同ブランド広報は話す。
“トラック オイル ナンバースリー”を取り扱っているサロンの1つ、「ドライブフォーガーデン(DRIVE FOR GARDEN)」でも同オイルはヒット中。人気の理由を、一番合戦彩トップスタイリストは以下のように分析する。
「スタイリング剤やオイルには、柑橘系やラベンダー系、ウッド系の香りは多いが、意外と金木犀の香りはなかった。フローラル系だと、ローズやジャスミンなど“定番”の香りだけが目立っていた印象だ。金木犀の香りを実際に使ってみると、飛び抜けて個性的なわけではないが、これまであまりなかった感じの、少し甘い独特なフローラルの香り。とがっていない分、誰が試しても『いい香り』と思うような香調になっている。あと、それほど多く出回っていないため、“希少感”から人気に拍車がかかっている側面もある。当サロンでも今現在(8月25日現在)は欠品しているが、取り扱っていたときは『どうすれば取り扱えるのか』という美容師からの問い合わせも多かった」。
生産量が増すにつれ、“希少感”は落ち着いてくるだろう。そのときに、金木犀の香りは変わらず売れ続けるのか、一過性のブームで終わるのか、別のフローラル系の香りが登場して“フローラルトレンド”を築くのか、今後の動きに注目が集まる。