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セレクトリサイクル「パスザバトン」丸の内店が閉店 事業部長に聞くこれからの“もったいない”ビジネス

 「スープストックトーキョー(SOUPSTOCK TOKYO)」を運営するスマイルズによるセレクトリサイクルショップ「パスザバトン(PASS THE BATON)」丸の内店が9月7日に閉店する。第2号店の表参道店は6月末に閉店。京都店は、市の伝統的建造物群保存地区の物件ということもあり、継続運営する。「パスザバトン」は個人の思い出の品物や愛用していたが必要なくなったものを使ってくれる人に渡す(バトン)をコンセプトにスタート。有名ブランドの古着から食器棚の奥に眠っていた器まで、さまざまな商品および、一部企業のデッドストックなども販売してきた。2019年からは、「パスザバトン マーケット(以下、PTBマーケット)」と称して、外でいろいろな企業のB品・デッドストックを販売する市を開催。表参道店と丸の内店の閉店により「パスザバトン」のリブランディングを図る。今後の「パスザバトン」の方向性について、箕浦俊太スマイルズ パスザバトン事業部長に話を聞いた。

WWD:「パスザバトン」をこのタイミングでリブランディングする理由と目的は?

箕浦俊太スマイルズ パスザバトン事業部長(以下、箕浦):2009年に「パスザバトン」が設立されてから、個人レベルのリサイクルは浸透してきた。最近SDGsやサーキュラーエコノミーへの関心が高まり、企業のもの作りや既存の商流を見直すような世の中になった。「パスザバトン」でも、1部は企業のデッドストックなどを販売し、各企業の困りごとを解決する目的もあったが、店鋪内でそれをするには限度を感じていた。そこで19年に、店外で「パスザバトン マーケット(以下、 PTBマーケット)」を開催したところ、手応えを感じ、これからの方向性はこちらだと感じた。

WWD:「パスザバトン」表参道店が閉店、丸の内店も閉店するが、その理由は?京都店は?

箕浦:閉店というよりは、個人レベルのリサイクル事業をやめてみるということ。京都店は市の保護物件を借りていることもあり、京都の文化を世界に発信する場所として継続する。今後は、京都の企業との取り組みを強化していく。日本の伝統や四季の祭りごとを大切にしたいという想いがある。また、表参道店や丸の内店の売り上げの6割以上はリサイクル商品だったが、京都店のリサイクル商品の売り上げは3割と低く、お土産やギフト需要が多いという点からも、出品者に依存することなく維持できるのが理由だ。

WWD:19年に店外で、「PTBマーケット」を開催した理由は?

箕浦:店で企業の困りごとに向き合うには難しいと感じたから。半年に一度、一社の在庫を販売したところであまり意味がないと思った。だから、店の外である規模感を持って開いた。

WWD:個人対個人のリサイクル市場を作ってきたわけだが、それを、企業対個人のマーケットに移行する理由は?

箕浦:企業のもの作りのシステムを見直す必要がある。例えば、ECで返品されたものはB品として販売するしかない企業が多い。それらを消化する手段が「PTBマーケット」だ。企業と消費者両方の活動を見直し、一緒に考える場にしていきたい。

WWD:今まで「PTBマーケット」を4回開催してきたが、参加企業数などの推移は?

箕浦:1回目は22ブランドが参加した。オンラインで開催した2回目「十勝第百貨店」は20社、同じくオンラインで開催した3回目「デッドストック陶器市 九州編」は17社が参加。4回目は42社が参加し、2日間で約3600人が来場し、2300万円を売り上げた。

販売だけでなく、発信や実験の場に

WWD:「PTBマーケット」における、収益の仕組みは?出展する条件や対象業種などはあるか?

箕浦:出展料及び売り上げ歩合は、ファッションアパレル・雑貨が5万円で売り上げ歩合が25%、 食物販、お菓子などの軽飲食が2万5000円で売上歩合 20%、フードトラックが出展料 なし で売上歩合 10%。出展条件は「PTBマーケット」のコンセプトを理解し、共感してくれること。また、B品を販売するにあたり、コミュニケーションが取れるスタッフを配置できること。業種は限っていない。気付けていないものがあるかもしれないので、関心があれば連絡して欲しい。

WWD:「PTBマーケット」は企業の倉庫に眠っているB級品や在庫に光を当てるというイベントだが、消費者からの反応は?直近の来場者の性別や年齢層、平均単価は?

箕浦:出展企業からは、消費者とのコミュニケーションが生まれるという声がある。4回目は入場料を300円に設定した。そうすることにより、お金を払っても入る価値があるかというハードルになった。事前に情報を入手して、「よし、行くぞ」という気持ちで来場してくれた人がほとんどだ。入場者からは、いろいろなブランドなどが一堂に会する場で知らないブランドに出合えたという声があった。4回目の来場者の6〜7割が女性で年齢別では30代が37%、40代が29%、20代が21%。平均客単価は3500円程度だ。

WWD:「PTBマーケット」の出展企業へはどのようにアプローチを行うか?

蓑浦:「PTBマーケット」の公式サイトで募集、受け付けを行う。4回目には企業による視察もあり認知度がアップしていると感じる。SDGsの意識が高まる中、10年以上にわたり各ブランドをリスペクトしながら“もったいない”と向き合ってきたのが「パスザバトン」だ。ある意味、経済効率性から反対の位置にある活動だが、最近では企業から「どこから、どう始めたらいいか」というような相談が増えている。企業によっては「PTBマーケット」を発信や実験の場として捉えてくれており、不要になったものの回収なども行っている。

出展者、来場者、主催者でシステムを変える

WWD:コロナ禍で消費者はコロナ前以上に慎重かつ、より良いものを求める傾向があるが、そのような状況下でのマーケット開催の結果は?

蓑浦:人は買い物好き。それは、コロナ前後で変わらない本能的なこと。4回目の開催で、十分な手応えを感じた。入場料を設けたが、1時間半待って入場する人もあり、イベントに共感してくれる来場者が増えて一体感が生まれた。

WWD:主催者、出展者、消費者、それぞれにおけるマーケットを開催する一番のメリットは?

蓑浦:出展者にとっては、在庫の消化チャネルになりつつある。物作りは続くわけであり、売れ残ったものを「PTBマーケット」で販売し、倉庫が空っぽになれば、また、物作りをする勇気が出る。過去の負を未来につなげるイベントだ。消費者にとっては、いいものを安く買えるので経済合理性にかなっているし、B品の理由などに触れることで消費行動への気づきにつながっている。主催者側としては、コロナ禍でも楽しく開催できた。社会的意義があるし、ビジネスとして成立しているので、これから大きくしていきたい。「PTBマーケット」を軸に“ニューサイクル コモンズ”と掲げて、既存のビジネスシステムを見直して新しいシステムを共感してくれる仲間と築いていきたい。出展者、来場者、主催者、会場、全てがスクラムを組んで、システムを変えていこうという思いがある。また、出展者同士の繋がりや、回収拠点の場を提供することで、偶発的な出合いを提供できればと思っている。いわゆるコミュニティー的な活動で、企業と消費者の垣根をなくすのが目標だ。

WWD:「PTBマーケット」開催予定と今後の戦略は?

蓑浦:年内は、10月9〜10日、12月11~12日に開催予定だ。22年には4~6回、規模を大きくして開催したい。本気で日本国内の倉庫を空っぽにする意気込みがあるので、行政と組んで地方でも行いたいと思う。

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