ファッション

三陽商会の自社工場、「あおもり藍のコート」がクラファンで反響

 三陽商会のサンヨーソーイング青森ファクトリー(青森県上北群七戸町)が作った「本藍染コート」が、応援購入サービス「マクアケ」で大きな反響を呼んでいる。

 コートは地元のあおもり藍産業協同組合と協業で企画した。8月20日にプロジェクトを開始したところ、初日に限定30着の早割20%の返礼品が完売し、その2日後には15%割の50着も売り切れた。9月2日時点で107着を販売し、応援購入総額は目標を大きく上回る約800万円に達している。青森駅前の「A-FACTORY」に続き、8月25日からは伊勢丹新宿本店のマクアケスペースでも試着・展示会を開催した。定価1着8万円の高価格にもかかわらず、予想以上に好調で、来店客からは「実物も色がきれい」「軽くて着やすい」といった声が多く届いているという。 

 三陽商会の子会社サンヨーソーイングはコート専業50年の歴史があり、とりわけ綿ギャバジンを使ったトレンチコートの生産技術については高い評価を得ている。ところが、昨今のアパレル不振でコートの消費量も減少傾向にあり、新たな付加価値のコートが求められていた。

 同社青森ファクトリーの工場長、青木豪氏は、本藍染コート開発の理由をこう語る。「日本にはもともと着物を裂織りにして着るなどモノを大切にする文化があった。それを昇華させて今の洋服文化に取り入れれば、おもしろいものができるのではとずっと考えてきた。クラファンに挑戦することで、一般の人にもあおもり藍や当社の生産技術を知ってもらいたい」

 一方、青森の藍は江戸時代に津軽藩士たちの生業として発展したが、明治期以降、衰退の一途をたどってきた。2003年からあおもり藍産業協同組合が研究をスタートし、06年には、乾燥した藍葉をパウダー化することで職人の勘に頼らない独自の染色法を確立。14年から始めた大学との共同研究でさまざまな効能が解明され、抗菌スプレーやお茶、スイーツなど他分野への活用が進んでいる。10年にはJAXAに宇宙飛行士の船内着として採択された。

 今回のプロジェクトでは両者の技術力を駆使し、メイド・イン・青森ならではのモノ作りに挑戦した。工場の閑散期である1~2月に生産し、4月の桜のシーズンに着用できるよう、半裏仕様でゆったりめのコートを開発した。

 デザインは、あおもり藍の特徴である美しい発色を引き立たせるシンプルなステンカラータイプ。合成染料を使わず藍と天然由来の触媒で染める本藍染めで、明るい「空色」と濃い「藍色」の2色を用意した。4メートルの着分を手でなでるようにして染め、すずき、乾燥を複数回繰り返して染め上げる。

「染色については均一な色に染めるのが難しかったが、縫い縮みを起こさずにストンと落ちるシルエットが当社の得意とするところなので、その強みを引き出せるやり方にした」(青木氏)。天然本水牛のオリジナルボタンもあおもり藍で染色したほか、生地にはっ水加工を施すことで、軽い雨の日なら安心して着られるという。

 他にも、本藍染コートには、コート専業50年で培ってきた技術力と矜持が細部にわたって見られる。同社では独自の工業化パターン技術で緻密なパターンを作成。縫製過程で生じる歪みやサイズ感のズレを防ぎ、設計通りのサイズとシルエットに仕上げている。
 縫製では「上下の糸のテンションを合わせることからこだわり、美しいステッチワークにつなげている。さらに、縫い縮みが起こらないよう引き縫いをしてストンと落ちるシルエットを生み出している」(青木氏)。衿の内側は手作業のまつり縫いにし、柔らかく首に沿いやすい衿に仕上げた。

 マクアケでの応援購入期間は、9月29日18時まで。来年3月末の納品予定で、4月からは新たに受注生産を開始する。あおもり藍とのコラボ第2弾も構想中。青木氏は「インベーションされた藍染を使ったインパクトのあるものでないと作る意味がない」と言い、新たな技術や機能の開発に今後も挑戦する考えだ。

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