ニューヨーク&ロンドンに続き、ミラノ・コレクションが始まりました。2022年春夏シーズンは、現地在住のスタッフがリアルショーを取材中。とはいえ、日本にいる「WWDJAPAN」編集部員も、何か手伝い、日本で“お祭り感”を楽しみたい!そう考え、現地のスタッフがカバーしきれなかったブランドのデジタルショーをレビューします。
「フェンディ」は70年代のディスコの世界をタイムレスに
キム・ジョーンズ(Kim Jones)が共同アーティスティック・ディレクターに就任して以来、「フェンディ(FENDI)」はビジネスも好調と聞きます。頑張れば買えるジュエリーが若い世代に、一着数千万円のオートクチュールが富裕層にと、“全方位”な商品提案が効果を発揮しつつあるように見えますが、キムはその理由を「リアルだから。ビンテージでもなく、アバンギャルドでもない。そしてタイムレスだから」と答えます。
今シーズンの「フェンディ」は、まさに、そんな彼の哲学を体現するようなコレクションでした。インスピレーション源の大きな1つは、ニューヨークの伝説的なディスコ「スタジオ 54」。カルチャーの世界ではアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)、ファッションの世界ではカルバン・クライン(Calvin Klein)らに愛された、1970年代の象徴です。さまざまな人が、自由なファッションを楽しんだという「スタジオ 54」の雰囲気は、「シャープ」より「エッジー」という言葉の方がぴったりなセットアップや、マイクロミニのホットパンツ、フリンジをカスケード(滝)のように重ねたフラッパードレス、そしてもちろん豪華なファーコート(リサイクル素材も多いそうです)などから漂ってきます。カラーパレットは、新時代のいまにふさわしいピュアホワイトに始まり、淡いベージュやグレーに転じたかと思えば、後半は鮮やかなベビー&ショッキングピンク。シルクサテンの素材やゴールドの色合いは、ミラーボールの下にピッタリです。カフタンドレスやブラトップ、ニットで作ったボディコンドレスは、もはや欠かせない着心地に配慮したもの。ユニークなアクセサリーとセットで、70年代のスタイルをアップデートする大事な要素です。そこに、ファッション界で活躍したイラストレーター、アントニオ・ロペス(Antonio Lopez)が描いた、「FENDI」の新しいロゴをプラスしました。ロペスは、前任のカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)が招待状の制作などを依頼したデザイナーであり、キムは「彼のスケッチは、アンディ・ウォーホルやデイヴィッド・ホックニー(David Hockney)のクリエイティビティをかき立てたんだ」と語ります。カールという「フェンディ」にとって欠かせないレガシーと、アンディ・ウォーホルという「スタジオ 54」を語る上でやっぱり欠かせないレガシーを意識した上でのイラストレーターの選定に、ブランドの歴史をコンテンポラリーに蘇らせるキムのセンスを感じます。キムって、どうやって歴史を調べているのかな?
「ロベルト カヴァリ」はど直球にタイガー!ゼブラ!!レオパード!!!
この5年で経営もデザイナーも激しく入れ替わってきた「ロベルト カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」。現在はドバイの投資会社が、ファウスト・プリージ(Fausto Puglisi)を起用して再起を図ろうとしています。イタリア・シチリア生まれの、ど直球を投げるタイプのデザイナーで、アニマルプリントやバロックモチーフで表現するセクシーが得意技です。
コレクションは、良くも悪くも(いや、どっちかと言えば良いのかな?)「ファウスト・プリージ」でした。とってもわかりやすく、タイガー!ゼブラ!!レオパード!!!超マイクロミニ丈、見えそうで心配なくらいの深いスリット、その一方で大きなスカートのボールガウン。タイガーが「『ロベルト カヴァリ』復活だガォ~」と咆哮しているようです。
正直「ロベルト カヴァリ」の要素を見つけるのは難しかったのですが、だんだん見ているうちに「『ロベルト カヴァリ』ってなんだっけ?」と思うようにもなりました。それくらい創業デザイナーの退任直前から現在に至るまでの数年で、ブランドのレガシーは消え失せたのです。もともと確固たるアイデンティティがあったら、こんな事態にもなっていなかったでしょう。「そんなブランド、復活させる意味ある?」という意見も一理ありますが、その知名度にはまだ可能性があるはず。ど直球でその可能性に賭けたブランドを、応援してみたいと思います。