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映画「ハウス・オブ・グッチ」の日本公開は来年1月 レディー・ガガら演じる登場人物のプロフィールを紹介

 映画「ハウス・オブ・グッチ(House Of Gucci)」の日本公開日が2022年1月14日に決定した。なおアメリカでは11月24日に公開される。リドリー・スコット(Ridley Scott)監督による同映画は、「グッチ(GUCCI)」家の三代目、マウリツィオ・グッチ(Maurizio Gucci)が、元妻パトリツィア・レジアニ(Patrizia Reggiani)が雇った殺し屋に射殺された実際の事件を映画化したもの。
 
 2019年11月に映画化のニュースが公開されて以来、撮影シーンなどがSNSを賑わせていることもあり、ファッションと映画ファンの間で「グッチ」ファミリーへの関心が高まっているはずだ。7月にはレディー・ガガ(Lady Gaga)、アダム・ドライバー(Adam Driver)、アル・パチーノ(Al Pacino)、ジェレミー・アイアンズ(Jeremy Irons)、ジャレッド・レト(Jared Leto)らが演じるキャラクターのティーザー画像も公開になり話題になった。ここでは、映画内に登場する実際の人物たちのプロフィールと経歴を紹介する。

パトリツィア・レジアニ(演:レディー・ガガ)

 レディー・ガガが演じるパトリツィア・レジアニは、ごく普通な家庭に生まれたが母親が輸送業界の有力者であるフェルナンド・レジアニ(Fernando Reggiani)と結婚したことで、社交界へ仲間入りを果たした。パトリツィアは1972年にマウリツィオ・グッチと結婚し、2人の娘、アレッサンドラ(Alessandra)とアレグラ(Allegra)を産んだ。パトリツィアとマウリツィオは世界的に有名なパワーカップルとなり、ミラノとニューヨークの2拠点を行き来した。

 マウリツィオの父親ロドルフォ・グッチ(Rodolfo Gucci)はパトリツィアが一家の財産を狙っているのではと疑い、2人の結婚を認めなかった。そこでロドルフォは結婚式を妨害しようとするが失敗し、結婚式にはグッチ家からは誰も参列しなかった。2人は1984年に離婚した。

 拝金主義で知られていたパトリツィアはハイブランドの服や豪華なジュエリーでいつも着飾っており、離婚後さらにその金に貪欲な性格に拍車がかかっていた。米「WWD」の記事によれば、彼女はイタリアのテレビ番組で「元夫マウリツィオから養育費として年間300万ドル(約3億3000万円)貰わなければ生きられない」と語っていたという。

 マウリツィオは殺害される前、長年交際していたパオラ・フランキ(Paola Franchi)と再婚する直前だった。レジアニは再婚によって元夫の財産を使えなくなることを恐れていたという。パトリツィアはマウリツィオの葬式で彼の死について「人間としては残念に思う。でも個人的なレベルではそうは言えない」と取材陣に語っていた。

 殺害から2年後、イタリア警察は殺し屋ベネデット・セラウロ(Benedetto Ceraulo)を37万5000ドル(約4100万円)で雇いマウリツィオを殺害したとしてパトリツィアを逮捕した。ミラノのコルソ・ヴェネツィア通りに位置する豪勢なアパートで逮捕されたパトリツィアは、当時足首まで丈があるミンクのロングコートを着ていたが、その後母親に「刑務所に合うように」とレインコートに着替えさせられた。

 98年にパトリツィアは有罪判決を受けて29年の懲役を宣告された。2016年に16年の刑期を終えて釈放されてからはミラノに在住し、ジュエリー会社でデザインコンサルトとして働いている。

マウリツィオ・グッチ(演:アダム・ドライバー)

 アダム・ドライバーが演じるマウリツィオ・グッチは、創業者のグッチオ・グッチ(Guccio Gucci)の孫で、ロドルフォ・グッチの息子にあたる。グッチ一家が「グッチ」のビジネスに携わった最後の代だ。当時ニューヨークのサヴォイ・プラザ・ホテル(Savoy Plaza Hotel)の店舗を皮切りにアメリカ市場開拓を担っていた叔父、アルド・グッチ(Aldo Gucci)を手伝う形で1972年にビジネスに加わった。同店と五番街の店舗の成功もあり、アルドとマウリツィオはアメリカでのビジネスを軌道に乗せた。

 父ロドルフォの死去と叔父アルドが脱税によってファミリービジネスから追放されたことを受け、マウリツィオは83年に社長に就任した。彼は在任中、安価な商品の広がりによって人気に陰りが見え始めていた当時のブランドのリブランディングを先導し、「グッチ」を現在のような巨大ラグジュアリーブランドとして確立した立役者だ。

 89年にマウリツィオはバーレーン拠点の投資企業、インベストコープ(INVESTCORP)と協力してグッチのビジネス再生に力を入れた。インベストコープはグッチの株式50%を取得。これはファッション業界で未公開株取引が行われる前例となり、その後多くのブランドが続くようになった。マウリツィオは「グッチ一家は今後ビジネスを続けていくにはあまりにも訴訟が多すぎ、準備もできていない」と考えていたようで、これが株式50%を手放す理由となった。

 この取引によって、グッチは世界中の免税店からの撤退や、偽物や安価な商品の排除に注力しラグジュアリーブランドとしての地位を立て直した。この立て直しにより、ブランドのデザイン統括やマネジメント陣営も入れ替えた。当時バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)の社長を務めていたドーン・メロ(Dawn Mello)の手を借り、バーグドルフ・グッドマンのアクセサリー部門のトップだったリチャード・ランバートソン(Richard Lambertson)を「グッチ」のデザイン・ディレクターとして引き入れた。その後、デザイナーのトム・フォード(Tom Ford)も「グッチ」のウィメンズを手掛けるようになった。

 小売りの不調と顧客がリブランディングに前向きでなかったこともあり、グッチの再生プランは90年代初期に座礁した。これが原因でマウリツィオとインベストコープの間に亀裂が入り、最終的にインベストコープは彼が保有していた全株式を取得。マウリツィオはグッチのビジネスから離れることになった。

 グッチを去った後、彼が公の目に触れられることはほとんどなかった。ヨットで過ごす時間を愛し、ファッションとは関係のないビジネスへの投資を視野に入れていたとされる。マウリツィオは95年、自身のミラノオフィスを立ち去る際に元妻のパトリツィアが雇った殺し屋によって殺害された。46歳だった。

アルド・グッチ(演:アル・パチーノ)

 アル・パチーノ演じるアルド・グッチは、21年にサドルとレザービジネスから「グッチ」をスタートした創業者グッチオ・グッチの長男だ。グッチオが53年に死去したことから後を継ぐ形で20歳で社長に就任し、ファミリービジネスに携わるようになった。同年ニューヨークにショップをオープンしてアメリカに進出を果たし、ビバリーヒルズ、シカゴ、フロリダにも拡大した。アパレル内のカテゴリーを拡大したこともアルドの功績の一つだ。共にアメリカでのビジネスを伸ばしたマウリツィオはアルドについて「大きなビジョンがある男だ」と語っていた。

 しかしアルドは社長在任中、一族内の確執に巻き込まれていた。息子のパオロ・グッチ(Paolo Gucci)が自身の名前を冠した商品を作れるように会社を相手取り81年に訴訟を起こし、「グッチ」は商標権侵害の差し止めを求めてパオロを提訴したが、パオロが反訴。最終的にパオロは88年に、自身がデザインした商品に対してのみ、自身の名を冠することができる権利を得た。さらにアルドは会社の資産を横領したとして、85年に会社に訴えられ、弟のロドルフォ・グッチにビジネスから追放された。その後ロドルフォが社長に就任した。

 ロドルフォが死去しその息子のマウリツィオが社長に就任すると、アルドとその2人の息子ロベルト(Roberto)とジョルジオ(Giorgio)は、遺書を理由に会社の実権を握ったとしてマウリツィオを提訴したが、89年にミラノの控訴裁判所が棄却した。

 86年にアルドはアメリカで脱税したとして有罪になり、700万ドル(約7億7000万円)以上もアメリカ政府に支払った。さらにアルドはアメリカ支社の売り上げを国外のペーパーカンパニーに横流ししたことを認め、禁固刑1年の判決を受けた。このときパオロが提供した情報が有罪判決に一役買った。アルドは最終的に5年半フロリダの刑務所に服役した。

 アルドは90年にインフルエンザの合併症で死去した。当時彼はがんの闘病もしていたという。84歳だった。
 

ロドルフォ・グッチ(演:ジェレミー・アイアンズ)

 ジェレミー・アイアンズ演じるロドルフォ・グッチも、創業者グッチオの息子の一人だ。ファミリービジネスにも関与していたが、俳優としてのキャリアでも知られている。ロドリフォは17歳のとき、アルフレッド・リンド(Alfred Lind)監督の29年の映画に脇役として出演し俳優デビュー。マウリツィオ・ダンコラ(Maurizio D’Ancora)の芸名で29年から46年にかけて映画や舞台に多く出演した。

 父グッチオの死をきっかけに俳優としてのキャリアを諦め、53年にファミリービジネスに本格的に加わった。兄のアルドが社長を務めていた時、ロドルフォは副社長を務めていた。アルドが会社を追放された後、82年に社長に就任したが、83年に心臓発作により71歳で死去。社長としての在任期間はわずか1年だった。その後息子のマウリツィオが社長に就任した。

パオロ・グッチ(演:ジャレッド・レト)

 ジャレッド・レトが演じるパオロ・グッチはアルドの息子にあたる。パオロは一家と揉め事が絶えなかったが、ブランドのチーフ・デザイナーとして50年代後期から60年代初期のビジネスの成功に貢献したのは彼だ。パオロは二度もクビにされており、一度目は父アルドに、二度目は叔父のルドルフォによって会社から追放された。

 パオロは契約不履行などを理由に500万ドル(約5億5000万円)を費やして会社を訴え、加えて自身の名前を冠したレザーグッズの会社を作るために名前の使用権利を求めてさらに会社を訴えた。最終的に自身のデザインに限り名前を使う権利を得たが、ブランドを立ち上げる夢は実現しなかった。80年には実質的にファミリービジネスから完全に離れ、87年に保有していた全株式を手放した。

 パオロは一家との訴訟だけでなく、私生活でも訴訟に悩まされていた。元妻のジェニー・ガーウッド(Jenny Garwood)からは養育費50万5600ドル(約5500万円)が未払いとして訴えられ、虚偽の破産申請の疑いで逮捕状も出ていた。彼はマウリツィオの殺害から数ヶ月後の95年に心不全と腎不全により64歳で死去した。

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