毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2021年10月18日号からの抜粋です)
村上:正直、最初はタイトル案に「女性性」とあるのを見て、「え〜」と思ったよ(笑)。最近はずっと「女性らしさって、なんだろう?」って思ってきたから。
藪野:ですよね(苦笑)。そうおっしゃると思って、僕も深く考えました。
村上:そこ、聞きたい!
藪野:ミニ丈や露出が多いミラノの序盤を見て、最初は「セクシーが戻ってきた!」と思ったのですが、「プラダ(PRADA)」の展示会やパリ2日目の「ディオール(DIOR)」を見て、単に“セクシー復活”で片付けてはいけないと。女性性をもっと自由に表現しようというメッセージや、既成概念の呪縛から解き放つムードが、新たなアプローチだと感じたんです。例えばコルセットなど、かつて女性の自由を奪ってきたアイテムを、今回はマインドの解放を表現するために再解釈する提案が目立ちました。
村上:なるほど、勉強になる。
藪野:もう一つ、肌の露出や官能的な表現に関して、若い世代はもっと自由に考えていると感じます。“Y2K”ファッションの再燃にしても、昔のブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)のようなスタイルって個人的には軽薄な印象が強いんですが、Z世代にそのイメージはなく、新鮮なのかなと。結果、シーズンを通してセクシーなスタイルが目立ちましたが、それはファッションでの自己表現がより自由になったと解釈しています。
村上:「女性性」という文字を見て一瞬逡巡したんだけど、僕が「これでいいのかも」って思ったのは、「女性性」に縛られているのは、むしろ僕の方じゃないのかと考えたから。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の東京でのショーを見て、川久保さんが「『ギャルソン』だからこうあらねば」という思いからも解放されてますます強くなったことに感動したんだけれど、自分も「女性性」という言葉から解放されなきゃいけないんじゃないかって。解き放たれようとしていたつもりだったけど、逆にそれに縛られていた、みたいな。
藪野:僕も、ジェンダーの扱い方に敏感になりすぎて自分にブレーキをかけていましたが、その感覚すら意味がなくなった印象です。これからはポジティブに捉えるのが正解と思い、「女性性」という強い言葉をあえて使いました。
村上:僕も解放されたよ(笑)!