栗原たおが手掛ける「トリコ・コム デ ギャルソン(TRICOT COMME DES GARCONS)」は2022年春夏、「タオ」に改名する。10月19日には南青山のコム デ ギャルソン社のオフィスでプレスと関係者を招いたフロアショーを開催し、最新コレクションを発表した。
「長く経験を積んだ自分のブランドとして、さらに強く、クリアに」表現するための改名だ。新たな1ページとなる22年春夏は、「白の世界」。「白のいろんな表現で、自分らしさを表現したかった」という。「トリコ・コム デ ギャルソン」は、ギャルソン社のブランドの中では手頃な価格帯や普段使いできる洋服も多かったブランド。その性格を放棄せずクリエイションに挑む彼女らしさを優先する路線変更だ。
コレクションはチュールやオーガンジーのような繊細な素材と、洗いざらしのコットンのような自然の風合いを生かし、フリルやラッフル、プリーツをふんだんに使ったドリーミーなウエアから幕を開けた。いわゆる、栗原たおらしいクリエイションだ。かすみ草のプリント、リボンのディテール、バルーンシルエットの袖、そしてトレンチコートなどの身頃に縫い合わせたレース。足元は、レースや金糸で飾ったバレエシューズでどこまでも愛らしい。
ところが、コレクション中盤は「白の世界」から一転。「白の世界」を際立たせるためでもあり、ギャルソン社のブランドらしくもある黒の世界に変わった。同じような素材やディテールを備えつつも、黒の世界は牧歌的と言うより貴族的なムードを備え、色による印象の違い、転じて「白の魅力」を再認識させる。終盤は、再度「白の世界」へ。だが貴族的なムードを踏襲し、磁器を思わせる青みを帯びた白の世界、漆喰のような立体感あるモチーフの表現が登場する。一方で、このパートは「トリコ コム・デ・ギャルソン」のファンを裏切らない日常性も備えた。細かなフリルをあしらったTシャツやタンクトップ、背面のリボンディテールがワンポイントのカッターシャツなども揃う。
栗原は今後についても「営業と相談して進めたい」と話す。かつてパリで発表してきた「タオ・コム デ ギャルソン」とは明らかに違う、既存のファンやチームの仲間との対話から成り立つ「タオ」の誕生を思わせた。