トム・フォード(Tom Ford)は11月10日、自身のクリエイションやキャリアなどをまとめた444ページの書籍「TOM FORD 002」を日本でも発売した。2004年に発売した「001」に次ぐ本作は、「グッチ(GUCCI)」や「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」を去って05年に立ち上げた「トム フォード」のキャンペーン・ビジュアルなどを収録しており、スティーブン・クライン(Steven Klein)やイネス&ヴィノード(Inez & Vinoodh)、ニック・ナイト(Nick Knight)、マート&マーカス(Mert & Marcus)らが撮影。「トム フォード」をまとったセレブの画像も多い。15年以上のクリエイションの中から、何をピックアップしたのか?15年前と現在の気分やクリエイションの違いは?トムに聞いた。
WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ今、「002」の発行を決めたのか?世界が大きく変わろうとしていることが影響している?
トム・フォード(以下、トム): 最初の本を出版してから17年、多くの変化があった。「001」でフィーチャーしたのは、「グッチ」と「イヴ・サンローラン」時代の私。つまり最初の章で、「002」は第二章だ。60歳になって、2冊目を企画し始めたときには、すでに「トム フォード」を設立してから15年が経っていた。 15年後、そして60歳。「振り返る時が来た」と思った。過去を振り返ることはめったになく、いつも先だけを見ることを好んできた。特にファッションにおいては、めったに過去を振り返らない。ショーのフィナーレで(ゲストへの挨拶を終えて)ランウエイに背を向けた瞬間、私は、次のコレクションを考えている。「次は、何をしようか?」といつも心配している。「私は今、何をするつもりだろう?」「それは、良いのだろうか?」「どのように受け取られるだろうか?」。この本の制作は、非常にカタルシス(無意識だったものを意識化するような)なプロセス。文字通り何千枚もの写真を見る過程で、その瞬間についてのすべてを思い出す興味深いプロセスだった。私が考えていたこと、感じていたこと、住んでいた場所、パーソナルライフでの出来事、そしてビジネスライフを思い起こさせてくれた。写真はすべてを反映していた。この本で、私は、私の人生のひとつの章の幕を閉じたんだ。
WWD:05年以降の作品を中心に、15年以上のクリエイションの中から、どんなビジュアルを中心にピックアップしたのか?
トム:まずは世界中のすべてのプレスオフィス、ニューヨークと東京、ソウル、香港、ミラノ、そしてロンドンから、過去10年間の記事や写真を送ってもらうことから始めた。印刷された記事や写真は、データを出力して確認した。画像をオンラインで見るのは、印刷された画像を見ることと同じじゃないからね。文字通り、何千もの画像を確認した。何かに取り組むときは、直感を信じている。すべての写真の確認は非常に早く、私の目をつかんだものは何でも書類の山に投げ込んだ。1000枚までの編集は早かった。そこから700枚に、そして最終的には400枚の画像に絞った。最後は、とても誇りに思ったと言わざるを得ない。本の中のすべての写真は、私にとって何かを意味している。それは、私の人生の特定の時間を強調している。 「過去15年間、私は何をしてきたのだろう?」とよく自問する。そして、子どもを授かったこと、2本の映画を作り、この素晴らしいグローバルブランドを創作してきたことに気づく。「実際、とてもたくさんのことをしてきたんだ!」と物事をきちんと整理して先に進めた。こうして過去の15年をスリップカバーに入れ、60歳で新しい章を始めることができた。素晴らしいことだ。
WWD:「グッチ」や「イヴ・サンローラン」を手がけていた頃と、05年以降の一番の違いは?
トム:世界は変わり、私の人生も変わった。今はロサンゼルスに住んでいて、9歳の息子がいる。ジャックを育てることは、私の人生の優先事項だ。「グッチ」にいたとき、私はよく飲み、ドラッグもやっていた。今は酔っていないし、冷静で、人生が変わった。すべてが、より良くなった。ただ過去と現在のクリエイションの間には、1本の共通の糸がある。私はまだ同じ人間で、同じことが好きだから。もちろん当時はやっていたのに、今はもうやらないこともある。ただ創造的なプロセスは、アルコールと薬物がないことを除いて、これまでと同じだ。本能的な人間だから、インスピレーションを得たもの、感動したものから創造を発信している。常に「私は自分の人生の中で、人々が何を着ているのを見たいのだろう?」「私は、どんな世界を見たいのだろう?」「私は、何を見たいのだろう?」と考え続けている。だからショーで発表するコレクションは、6カ月前とまったく違っていることも多いんだ。
WWD:「グッチ」時代から、肌見せのセクシーは1つの特徴だと思う。露出にこだわる理由は?
トム:私の服は、いつもセクシー。 それは、私のコアの一部だ。 しかし年をとって子どもを授かると、世に出したいものに対する認識は変わる。 考える必要が生まれたんだ。「ジャックがこの写真を見たら、彼はどう思うだろうか?」「彼の友達は、なんて言うだろう?」とかね。 だからかつてほど露骨に性的ではなくなったが、それでも官能的だろう。 私は官能的な人間、私の服はそれを反映しているよ。
WWD:「003」を出す頃(いつ頃出したい?)、世の中はどんな風になっていると思う?
トム:Oh, my god!!まだ何にもわからない。私の70歳の誕生日だろうか?!その時の世界なんて、誰がわかるだろう?すべてが急速に変化しているから、5年後の世界だってわからない。19歳のジャックさえ、まったく想像できないよ(笑)。