「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」の親会社であるケリング(KERING)は11月10日、約3年にわたり同ブランドを率いてきたダニエル・リー(Daniel Lee)=クリエイティブ・ディレクターの退任を発表した。2019-20年秋冬コレクションでランウエイデビューしたリーは、瞬く間にブランドをトレンドセッターに返り咲かせた立役者。象徴的な編み込みの技法“イントレチャート”をモダンに再解釈したバッグやシューズをはじめ、多くのヒットアイテムを生み出してきた。
同グループは、声明の中で「『ボッテガ・ヴェネタ』とダニエル・リーは、コラボレーションの終了に合意したことを発表する。彼はブランドに新たなエネルギーをもたらし、『ボッテガ・ヴェネタ』の現在の勢いに多大な貢献を果たしてきた」と述べた。退任の理由は明らかにされていないが、近日中にブランドの新たなクリエイティブ組織が発表される予定だという。
リーは「『ボッテガ・ヴェネタ』で過ごした時間は、素晴らしい経験だった。卓越した才能あふれるチームと共に働けたこと、そして、私たちのビジョンの実現に関わってくれた全ての人に感謝している。また、フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者(CEO)のサポートや『ボッテガ・ヴェネタ』が紡ぐストーリーの一部になるチャンスを与えてくれたことにも感謝している」とコメントした。
一方、ピノー会長兼CEOは、「彼の唯一無二のビジョンは、ブランドの伝統を現代にふさわしいものに変え、ブランドをファッションシーンの中心に押し戻してくれた。私個人としても、『ボッテガ・ヴェネタ』の長い歴史の中で、彼が綴ったユニークな一章に感謝している」と述べた。また、レオ・ロンゴーン(Leo Rongone)=ボッテガ・ヴェネタCEOも「彼はブランドの50年の伝統に敬意を表しつつ、フレッシュな視点と現代性の新たな感性をもたらしてくれた。この3年間の目覚ましい成長は、彼のクリエイティブな仕事が成功したことを証明している」と説明。実際、2020年、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で多くのブランドが苦戦する中でも、同ブランドは成長を継続。直近の21年第3四半期の既存店売上高も、前年同期比8.9%増となっている。
現在35歳のリーはロンドンの名門セント・マーチンズ美術大学を卒業後、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ダナ キャラン ニューヨーク(DONNA KARAN NEW YORK)」などでキャリアを積み、「セリーヌ(CELINE)」に入社。当時のクリエイティブ・ディレクター、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の下で、ウエアのデザイン・ディレクターを務めた。その後、18年7月、「ボッテガ・ヴェネタ」を17年間率いてきたトーマス・マイヤー(Tomas Maier)の後任として、現職に就任。ブランドの発展に貢献してきた。また、ファッション・ウイークのカレンダーから離れ、ベルリンやデトロイトなど独自のロケーションと日程でコレクションを発表したり、公式SNSアカウントを削除したりと、デザイン以外でも改革に取り組んできた。