綿や羊毛などの天然素材の循環を目的にした「天然繊維循環国際協会」(八木原保理事長、略称NICO)の設立会見が18日、東京・原宿で開かれた。持続可能な社会の実現のため、衣料品の分別・回収の仕組みを確立するためアパレル事業者や自治体の連携を促す。回収した衣料品は、主に緑化活動に役立てる。また環境に配慮された天然繊維の生産支援も行う。
NICOはアパレル事業者の会員を募ると同時に、連携する自治体を増やし、分別・回収の仕組みづくりから活動を着手する。現状、家庭ごみとして出された衣料品は、天然繊維も化学繊維も区別なく回収されている。自治体への働きかけによって天然繊維を分別し、リサイクル過程を経て緑化用のプランター、農業資材、自動車内装材などへの再利用を促進する。
12日の設立会見では、ニットアパレルのジムの会長でもある理事長の八木原氏のほか、副理事長の若林康雄氏(オーロラ社長)、理事の三宅正彦氏(TSIホールディングス名誉顧問)、富吉賢一氏(日本繊維産業連盟副会長)、それに大学の工学部や農学部の教授らが登壇した。理事長の八木原氏は「時代が激変する中、業界をあげて新しい流れを作りたい」と話した。
NICO設立の発端となったのが、理事に就任した宇田悦子氏が八木原氏に持ちかけた相談だった。宇田氏は沖縄を拠点にするベンチャー企業フードリボンの経営者。同社はパイナップルの葉などの廃棄物リサイクルを通じて、循環型社会の実現に取り組んでいた。宇田氏がファッション業界や行政に広いネットワークを持つ八木原氏に協力を呼びかけ、衣料品の廃棄問題に垣根を越えて取り組むことになった。
化学繊維では日本環境設計による「ブリング」などポリエステルの回収・再生の整備が進んでいるが、天然繊維では一部にとどまっている。家庭で廃棄された衣料品は分別されることもなく、大半が焼却や埋め立て処分されている。自治体と連携して回収・分別し、街の緑化という目に見える成果を住民に見せる。そうすることで住民に参加意識を持ってもらう。
実現のカギは自治体を巻き込んだ分別・回収だが、設立会見に登壇した渋谷区の長谷部健区長は「ファッションの街・渋谷から循環の輪を広げていきたい」とあいさつし、前向きな姿勢をみせた。今月から原宿などの店舗に回収ボックスを設置し、実証実験を始めている。