ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回のテーマは2次流通。サステナビリティの気運の高まりも受けて、古着店やリユース店、オフプライスストアといった店舗が出店を拡大している。さまざまデータを分析し、今後の流通再編を予想してみた。
2019年から20年春にかけて、わが国でもオフプライスストアの開発機運が高まったが、各社とも計画通りに拡大が進まない一方、コロナ下でユーズドストアが再拡大に転じ、2次流通の主役はユーズドになったかの感がある。サステナブルが問われる中、オフプライスとユーズド、どちらが2次流通の本流となるのだろうか。
伸び悩むオフプライスストア
ゲオクリア(ゲオの子会社)が19年4月25日に横浜の港北に開業した「ラックラック」(427坪)が皮切りで、同年9月14日にはワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンの合弁会社アンドブリッジが埼玉の西大宮に「アンドブリッジ」(300坪)を開設。在庫処分業者やディスカウントストアも次々とオフプライスストアに進出したが、目論見通りに売れているという話は聞かない。
「ラックラック」こそ11月末時点で14店(他に期間限定3店舗)と3月末から4店舗増え、「アンドブリッジ」も今春開店のニューポートひたちなか店、ビバモール蕨錦町店で6店(うち2店は期間限定)となったが、販売効率は期待水準に届いていないし、出店ペースも「ラックラック」は24年までに50店、「アンドブリッジ」も22年までに30店という目論見には遠い。低価格プライスライン型の「タカハシ」も11月末で43店と、20年8月期末の41店から2店しか増えておらず、勢いを欠いている。
米国でも日本でもアウトレットモールの販売効率は通常モールの1.5倍ほど高く、米国のオフプライスストアはアウトレットストアと大差ない販売効率なのに、わが国のオフプライスストアは高くてもフルプライス店の7掛けほどにとどまっている。期待値の半分にも届かない水準だ。それでいて、オフプライスストア新規開店のテレビ報道などではバカ売れの混雑ぶりが紹介されたりする。
別にやらせではなく開店からしばらくは本当に売れるのだが、勢いがあるのはせいぜい2週間ぐらいだろう。人気のブランドやアイテムが売り切れてしまえば客足が激減し、人気商品が入ってくると盛り返し、売れ切れると客足が引くの繰り返しで、通年では期待外れの販売効率に留まってしまう。弾さえあれば売り上げを伸ばせるのだが、適品の調達が思うに任せないのがオフプライスストアの泣きどころのようだ。
欠品を恐れて猫マタギの不人気商品まで抱え込んでしまえば、1次流通の売れ残りをババ抜きする愚行に陥りかねず、放出品を丸抱えしてそんな隘路に陥る業者もある。オフプライスストアは適品だけを選択して継続調達できないと成り立たず、調達ルートが限定され仕分けも選択も徹底できない事業者が行き詰まるのは必然だ。
ブランドとタイアップした専用開発品が不可欠
オフプライス商品はブランド側の「意図せぬ売れ残りや過剰在庫」に依存しているから都合よくそろうはずもなく、適品が売り切れてしまうと類似品の補充が思うに任せず、売り上げが落ち込んでしまう。その穴を埋めるのがブランド側とタイアップした計画調達品だ。旧シーズン品ばかりになりがちなオフプライスストアで、今シーズン企画のタイアップ調達品は鮮度訴求にも貢献する。
米国の大手オフプライスストアはデッドストック中心のバーリントンを除いて、半分近くがブランド側とタイアップした計画調達品だと言われるが、わが国のオフプライスストアはまだそんな事業規模には遠い。アウトレットストアでも専用開発品は品ぞろえを維持する必須条件と認識されており、米国ブランドでは過半どころか98%が専用開発品という例もある。わが国でも一昔前までは欠けた色・サイズの補充生産に留まって1〜2割ほどだったのが、今や専用企画が拡大して3〜4割は当たり前になってきた。専用企画品がないとアウトレット品が不足するシーズンは売り上げが低迷し、運営経費ばかりかさんで赤字経営になってしまうからだ。
ならばオフプライスストアも事業規模の拡大とともに専用開発品を広げていけば良さそうなものだが、そう簡単にはいかない。アウトレットストアの専用開発品はブランドが自ら作るもので、プロパー品の生産仕様や残反・残糸を使って小ロットでも対応するが、オフプライスストアの専用開発品はブランド側にロット発注してオフプライス販売するものだから原価を抑える必要があり、それを可能にするロットを売り切るには3ケタの店舗展開が必要になる。
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