百貨店が売り場再編を加速させる。大都市の基幹店ではフロア構成の多くを占めてきた衣料品を集約する一方、ラグジュアリーブランドや時計・宝飾品、美術品といった高級品の売り場を増床する。定期借家契約(定借)によるテナントの割合も増やす。地方店では専門店だけでなくホテルや水族館など、物販以外の施設を誘致する事例も出てきた。コロナによる市場変化が大胆な改革へと背中を押す。(この記事はWWDジャパン2021年12月13日号からの抜粋です)
「トップライン(売上高)を上げるため、百貨店を科学してMDバランスを変える」
11月に行われた三越伊勢丹ホールディングス(HD)の2021年4〜9月期決算説明会で、細谷敏幸社長は「科学」という言葉を繰り返した。4月の就任以来、緻密なデータ分析を収支計画や顧客管理に取り入れてきた。24年度(25年3月期)を最終年度とする中期経営計画(中計)では、この手法を売り場のMDにも広げる。
ラグジュアリーブランドを拡充
具体的には、売り場の面積シェアと売り上げシェアのギャップを埋める。基幹店である伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店を商品別に分析すると、「婦人服・雑貨」が面積ほどの売り上げシェアを確保できていないのに対し、「ラグジュアリー」「宝飾・時計」は面積以上の売り上げシェアを占める実情が浮き彫りになる。商品単価に差があるため、面積シェアと売り上げシェアは単純比較できないが、顧客ニーズとのズレはこれまでも指摘されていた。
両店の「ラグジュアリー」「宝飾・時計」の合計売り上げシェアはコロナ前の19年度で23%、これが24年度には27%に高まると予想する。一方で「婦人服・雑貨」の売り上げシェアは縮小を見込む。「この(売り上げシェアの)想定に基づき、面積のアレンジをする。強い意思でやっていく」と細谷社長は述べる。
百貨店にとってMDバランスの変更は簡単ではない。組織自体が長年の商品分類に基づく縦割りであることに加え、取引先の調整や改装費も重くのしかかる。だが屋台骨である伊勢丹新宿本店のMDバランスのズレによる機会損失は、グループ全体の収益に影響する。
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