東京2020オリンピックのスケートボード 女子パークでは、四十住さくら選手が金メダル、開心那選手が銀メダルを獲得。女子ストリートでは、西矢椛選手が金メダル、中山楓奈選手が銅メダルを獲得するなど、日本人女子が大活躍し、大会を大いに盛り上げた。
彼女たちのヘアスタイルに注目してみると、上記4人のメダリストのうち、実に3人がロングヘアで大会に臨んだ。ほか、ファッショニスタとしても注目され、女子ストリート8位入賞の西村碧莉選手や、日本代表ではないものの、宮崎生まれでインスタグラムフォロワー数140万人超の人気者、銅メダリストのスカイ・ブラウン選手も美しいロングヘアで大会を彩った。
東京2020オリンピックの後、SNSを中心に「スケボー女子の表彰台の3人みんなロングヘア」「ロングヘアを風になびかせて滑る姿かっこいい!」などと盛り上がりを見せ、「#スケボー女子」がトレンドワードに浮上した。その盛り上がりはサロンユーザーにも波及したようで、美容師による「最近“私、髪伸ばすことにしました宣言”するお客さまが増えた」「ヘアはロングで、バックプリントのあるオーバーサイズのトレーナーやボトムスを合わせる“スケボー女子コーデ”が人気」などといったコメントがSNSを賑わせた。
キーワードは“ヘルシーロング”
夏以降も、意識的に美容師にヒアリングを行ってきたが、ロングヘアに流行の予感を感じている美容師は少なくなかった。また、上記は“スケボー女子”世代である10~20代のトレンドだが、もう1つの流れとして、その上の世代にもロングの流行の兆しがある。
その流れに関して、「カキモトアームズ(kakimoto arms)」の篠田佳奈カラーリストチーフは以下のように話す。「30代アッパーのお客さまの中でも、ロングヘアにする方が増えている。それには、ハイライトカラー人気の影響が大きいと思う。リモートワークで職場に行く頻度が減り、以前は職場の目を気にして躊躇していた、ハイライトカラーにチェレンジする働く女性が増えた。また、サロンに行きづらい状況が続いたことで、一色染めよりも伸びてきた部分が目立たないハイライトカラーは、一層求められるようになった。こうしたハイライトカラー人気がなぜ“ロングの流行”に結びつくかというと、ロングヘアの方が自分で髪色を見て楽しめるし、髪がなびいた時に動きや色の変化を感じやすいから。私のお客さまにはジムやヨガに通っている人も多いが、髪をバレッタで結んだ時にハイライトが入っているとこなれて見えるので、“ハイライト&ロングヘア率”は非常に高い」。
さらにハイライトの中でも、トレンドの色があるという。「以前はアッシュやオリーブ系など、くすんだ寒色が流行っていたが、最近は健康的に見えるベージュ系が人気。『くすみ過ぎたくない』『顔色を良く見せたい』というニーズが高く、いわば“ヘルシーロング”が求められる傾向がある。特に評判が良いのが、黒ベースでベージュ系のハイライトを入れるカラーリングだ。ブラウンベースも人気だが、褪色するとオレンジになってしまう。その点、黒ベースはブラウン以上に伸びても気にならないし、白髪のある髪にも対応しやすいので“ファーストハイライト”にも適している」。
“ロングヘアブーム”は10年ほど前にもあったが、その際は“巻き髪”がキーワードのガーリーなテイストだった。今回の“ヘルシーロング”は、「同じ巻きでもコンサバな巻きではなく、ちょっとほつれた感じが特徴」だという。“スケボー女子”に端を発する、10~20代女子が目指すロングヘアとの共通点は、“健康的で、颯爽と歩く姿が似合うヘルシーなロングヘア”という点だ。ロングヘアが流行ると、美容室業界全体が盛り上がるので、久しぶりのブームの兆しに注目が集まっている。