REPORT
限りなく黒に近い濃紺。その色選びに見るナデージュのセンス
ナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキーによる2シーズン目のコレクションは、ファーストシーズン同様、彼女が好きなブルーノワールの色からスタートした。ブルーノワールは限りなく黒に違いが、黒ではない濃紺。ファーストルックのイブニングは、黒であればもっとモードな印象に、紺であればもっとトラディショナルな印象になっただろう。その間の絶妙なトーンを選ぶのがナデージュのセンスだ。イヴニングとコーディネートしているのは、ジャンプスーツや水着。メゾンの原点であるスポーツスピリットがさりげなく反映されている。
中盤は「エルメス」のスカーフにフォーカスしたフェミニンなスタイル。スカーフをそのまま使うのではなく、アーカイブ柄をジャカードやアップリケで表現するなど、再解釈を加えている。シルクとスエードのダブルフェイスのプリーツドレスは、歩くたびに繊細に揺れてフェミニン。さりげないがレザーの扱いと縫製に高度な技術を要するデザインだ。デザイナーが交代してもアトリエの技術は変わらず、進化を続ける。その技術がナデージュの発想やフェミニンで知的な世界観を支えていることがよく分かる。
後半は、白いシルクと栗毛の馬を連想する明るいブラウンのレザー、そして「エルメス」を象徴するオレンジを絡めた展開へ。シルクはあえてざっくりとした質感のハリのある織物とすることで、ドレスやスカートに有機的な丸みを形成。オレンジは奇をてらわず直球で目に届く明るいトーンが眩しい。
全体的に肩肘張らず上質で、フェミニンかつスポーティーなデザイン。インパクトが強い大きなメノウのネックレスやバングルも、有機的なデザインの中にあるとしっくりと収まるから不思議だ。