ファッション
連載 コレクション日記

「フェンディ」はSFの世界と歴史あるローマを融合 ファッションの最高峰、22年春夏オートクチュールVol.3

 「フェンディ(FENDI)」は最終日、キム・ジョーンズ(Kim Jones)のウィメンズ・アーティスティック・ディレクター就任以来初となるオートクチュール・コレクションのリアルショーを開催した。その舞台となったのは、パレ・ブロンニャール(旧証券取引所)。真っ黒な会場内には、ライトが光る惑星のような球体とメタルフレームで表現されたアーチの輪郭が浮かび、地上には大きなダブルFのロゴが光る。それは、SF映画の未来的な世界観と古代ローマのイメージが融合した神殿のような空間だ。

 今季もクリエイションのベースにあるのは、「フェンディ」の拠点であるローマ。歴史ある街を出発点にしながら、「スターウォーズ(STAR WARS)」や「デューン(DUNE)」からヒントを得た異世界的な文脈を交えることで、モダンかつクールに仕上げている。ミニマルなシルエットのミンクケープや丸い肩のラインが特徴的なベルベットドレスには、明暗の対比を生かす“キアロスクーロ”という手法で、本社を構えるイタリア文明宮にある古典主義の彫刻をハンドペイント。フロアレングスのコラムドレスやケープのようなディテールを加えたミニドレスには、同色のビーズやスパンコール、パール、ファーを用いて、古代ギリシャやローマの柱に見られるコリント式のレリーフをあしらっている。また、先シーズンも見られたような、過去を引用したプリントの上にさらに装飾を重ねる手法も見られる。

 ペルシャラムとレザーのショートジャケットにレザーパンツを合わせたルックは勇敢な戦士の趣で、ビーズ刺しゅうのラインやドレープが美しく流れるドレスは女神のよう。ジョン・ホプキンス(John Hopkins)による「エメラルド・ラッシュ(Emerald Rush)」の電子音と重低音が響き渡る中、煙と光の中から現れるモデルは、神々しく力強い。イブニングが軸になっているが、ミニ丈の提案が多いのは新世代の顧客のニーズを取り入れているようで、現代的に映る。

 「フェンディ」はキム参画後の2シーズン、美しくロマンチックな映像をデジタルで配信し、オートクチュールを発表してきた。それは、スローモーションやさまざまなアングルからのカットを効果的に取り入れており、コレクションにエモーショナルな要素をもたらすだけでなく、細かい部分までを見せることができるものだった。今回のショーで、そんな映像と同じように客席からすべてのディテールがハッキリと見えたかというと、そうではない。しかし、オープニングからフィナーレまでゾクゾクが止まらないような感覚はデジタルには変え難いと実感するショーだった。


 2022年春夏オートクチュール・ファッション・ウイークが、1月24日から27日まで開催された。オートクチュールとは「高級仕立て服」のこと。職人たちが何百時間もかけて作り上げる贅を極めた作品が披露されるだけでなく、クリエイティビティーの実験ラボという側面もある。複数回に分けて、キーブランドの現地リポートをお届けする。

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