仏ビューティブランド「クラランス(CLARINS)」を創業したクルタン・クラランス(Courtin-Clarins)一族が所有するホールディングス会社、ファミーユC(FAMILLE C)がロサンゼルスを拠点にするクリーンビューティブランド「イリア(ILIA)」を買収する。買収額は非公表。ファミーユCは「クラランス」も傘下に持ち、ほかにもオーガニックビューティブランド「パイ スキンケア(PAI SKINCARE)」やヘルスケア企業のソフィア ジェネティックス(SOPHIA GENETICS)などにも出資している。
2011年にカナダ・バンクーバーで創業した「イリア」は、今最も勢いがあるクリーンビューティブランドの一つだ。昨年は米「WWD」の「ビューティ インク(BEAUTY INC)」による新ブランド賞を受賞。トレンドになる前からクリーンビューティを掲げ、敏感肌でも使える優しい処方を特徴とする。中でも人気製品は美容液ファンデーション“スーパー セラム スキン ティント”で、19年の発売以来100万本を売り上げた。同製品がけん引し、ブランド全体の売り上げは19年の3000万ドル(約34億円)から21年は1億ドル(約115億円)と3倍以上になった。ECサイトが売り上げの半分を占めており、卸はセフォラ(SEPHORA)やクリード(CREDO)、イギリスのスペースNK(SPACE NK)、オーストラリアのメッカ(MECCA)などに絞っている。リピート率が高い顧客を育てて成長し、12カ月以内に7割の消費者がリピート購入するという。なお、18年末にサイラス キャピタル(SILAS CAPITAL)、20年1月にサンドブリッジ キャピタルらから資金調達を行った。
調査会社のブランドエッセンス マーケット リサーチ(BRANDESSENCE MARKET RESEARCH)によると、世界のクリーンビューティ市場の20年の売り上げは54億4000万ドル(約6256億円)だった。毎年平均12.07%伸長し、27年には115億6000万ドル(約1兆3294億円)になると予測する。ファミーユCは「イリア」の買収により、年々伸び続けるクリーンビューティ市場に進出することになる。「クラランス」も自然由来の成分を多く用い、現在製品の85%がナチュラルな処方を採用している。「イリア」同様に、創業当時から環境に配慮した経営を貫いてきた。ジョナサン・ズリエン(Jonathan Zrihen)=クラランス グループ(GROUPE CLARINS)社長兼CEOは「イリア」について「未来のためのサステナブルなビューティを育てるというクルタン・クラランス一族のミッションにマッチする」とコメントした。
ファミーユCの傘下で、「イリア」は今後さらなるグローバル展開を目指す。152の現地法人を持つクラランスのインターナショナルなネットワークを活用する狙いだ。プリスカ・クルタン・クラランス(Prisca Courtin Clarins)=ファミーユC副最高経営責任者は「『イリア』をクリーンカラーコスメの世界的リーダーに育てする。大きなポテンシャルを見出しており、25年までにブランド価値を3倍にしたい」と話す。また、今後スキンケアといった新カテゴリーの発売も視野に入れる。
「イリア」の買収は今年の上半期中に完了する予定で、ファミーユCが過半数株式を、クラランスやサーシャ・プラヴシック(Sasha Plavsic)創業者、リンダ・バーコウィッツ(Lynda Berkowitz)CEOはそれぞれ少数株式を保有する。なお、プラヴスキック創業者とバーコウィッツCEOは現職を続ける。
ファミーユCはビューティブランドやデジタルツールに出資をするベンチャーキャピタルに加え、フランスのユニコーン企業、ミラクル マーケットプレイス(MIRAKL MARKETPLACE)などにも出資している投資事業、フランスのカルチャーに投資する事業など、さまざまなビジネスを展開する。