2015年にユーチューブを開始し、現在は登録者数77万人超の人気ユーチューバーとなったあさぎーにょ。同時にファッションブランド「ポピー(POPPY)」のディレクターやアーティストとしての顔も持ち、「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージをさまざまな切り口で伝えている。SNS時代の申し子あさぎーにょに、リーダーシップやユーチューブとの向き合い方を聞いた。
WWD:ユーチューバーになったきっかけは?
あさぎーきょ:歌手になりたくて、大学を辞めて関西から上京した。路上ライブをしたり、オーディションを受けたりしていたが、ちょうどそのころユーチューバーが注目を集め始めていて、自分の歌を発信する新しいプラットフォームとして気軽に始めた。「ユーチューバーになろう」と思ったわけではない。動画投稿を重ねて、「あさぎーにょはこうだね」「あさぎーにょのこういうところが好き」といったコメントをもらうようになって、自分の個性やキャラクターが何なのかを深く考えるようになった。自分がどうありたいか、自分らしさが何なのかをユーチューブを通して見つけてきた。そしてたどり着いたのが、「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージだ。
WWD:表現者としてさまざまなジャンルの活動をする中で、気をつけていることは何か。
あさぎーにょ:「ワクワクを抱きしめよう」の軸をブラさないこと。そして、自分らしさをしっかりディテールに落とし込むこと。ただ、作ったものが人に褒められてもなんだか空っぽだと感じたり、逆に自分は最高だと思ったものへの人からの反応が悪かったりすると、自分の中でバランスが崩れてくる。それは年に数回風邪をひくようなもの。そういうときはホテルに一日こもってユーチューブのコメントを見返したり、自分が好きなものをじっくり振り返ったりするようにしている。そうすると、毎回必ずそのとき足りないものや課題が見えてくる。
WWD:自分の課題はどんな部分だと分析しているか。
あさぎーにょ:たくさんあるが、いろんなジャンルの仕事をさせてもらう中で、全部“本物”になり切れない。見よう見まねの部分がまだ多い。スキルも知識ももっともっと追求したいが、体は一つしかないので、ある程度割り切って進めていかないといけない。そこは悩むところだ。(スキルが不足している部分については)仕事の現場でプロの方に素直に聞くようにしている。例えばカメラマンさんに、「どういうディレクションをしたらこういう雰囲気の絵になるのか」といったように聞く。プロの方にそんなことを聞いてもいいのかと最初は悩んだが、皆さん私の無知も受け入れてくださるし、大御所の方も優しく教えてくださる。私もいつかそういう存在になりたい。
少女の心を持ち続けるリーダーが憧れ
WWD:自身のブランド「ポピー」を立ち上げた経緯は。
あさぎーにょ:CDの代わりに音楽を届ける方法として、パジャマのタグにQRコードを付けて販売したのが始まりだ。少しずつアイテムを企画していく中で、オリジナルなもの、自分たちが熱狂できるものを作りたいと考えるようになった。チームが整って、シーズンごとに商品を出せるようになったタイミングで、「ポピー」というブランドとしてしっかりローンチした。ユーチューブの撮影はほぼ一人で完結しているが、チームみんなでモノ作りをしていくことも好きだ。チームの指針のようなものはあって、新しいメンバーが入ったらそれを伝えている。「褒める」ことや、「モヤモヤしたらすぐに解決する」というのはそうした指針の一つ。私自身、モヤモヤをすぐに人に切り出して解決することが苦手だったが、みんなと考えが共有できているので、とても助けられている。
WWD:目指すリーダー像はあるか。
あさぎーにょ:少女のようなリーダーになりたいとは強く思っている。実際の年齢は関係なく、私が誰よりも少女の心を持っていて、私がワクワクしたことはどんな大きな夢であっても、チームのみんなが「叶うんじゃないか」と信じられるような存在でありたい。目指すはウォルト(・ディズニー)だ。コミュニケーションが取れていないと、チームの存在意義が分からなくなることもある。だからこそ、チームのメンバーには日々感じたことを常に熱量高く伝えるようにしている。それはユーチューブやSNSに日々の出来事や気持ちを共有するのと同じ感覚で、自分のクセでもある。
WWD:「ポピー」ではどのようにデザインを決めていくのか。
あさぎーにょ:シーズンテーマから入ることもあるし、今何が着たいかという気分から企画を進めることもある。ユーチューブを通して自分がどうありたいかを考えてきた中で、お日さまのような、温かみのある人でありたいという思いに行き着いた。だから、シルエットは包み込むような感じを意識しているし、コットンレースが好き。可愛くキュートでありたいが、人と違う個性もほしい。そういう感覚が「ポピー」のチームはとても似ていて、共有できている。
発信は、与えるより与えられるものの方が多い
WWD:あさぎーにょにとってユーチューブとは。
あさぎーにょ:ユーチューブをやっていなかったら、自分がやりたいことや自分とは何かが分からなかったと思う。発信をすることは、人に与えるよりも人から与えられるものの方が実は多いと近頃強く思う。最初はコメントなどを通して(ファンから)教えてもらうことばかりだったが、もらったものを返したいという気持ちが強くなっている。発信することの怖さはもちろん感じている。自分だけの考えを押し付けていないか、意図せず人を傷つけていないかと不安に思うときはある。それでも、発信をして、それに対してみんなから受け取ってきたものであさぎーにょはできている。やはりそこに大きな価値を感じている。
WWD:今後の目標は。
あさぎーにょ:「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージを、ファッション、音楽、物語、映画、カフェなど、さまざまな切り口で伝えていきたい。そのためには多くの仲間が必要だし、私自身もスキルや知識を磨いて、ワクワクをしっかりディレクションできるようになりたい。今、中国語の勉強もしている。中国の視聴者から非常に熱量の高いコメントをいただくことがあり、言葉が違う人に自分の世界観が伝わるのはものすごく嬉しいし、それは動画だからこそできるのだとも思う。中国のSNSも何種類か始めていて、既に日本のフォロワー数より多くなっている。ただ、中国ですぐにビジネスをするというのではなく、語学の勉強も中国向けの動画の投稿も、まだ楽しくてやっているという感じ。続けていく中で今後、何かにつながればいいなと思っている。