狂ったように猫を溺愛する美容ライターが、猫と美容を強引に結びつける力技ビューティコラムVol.18。猫にちなんで、毎月2(ニャー)日と22(ニャーニャー)日の2(ニャー)回更新しています。今回は、今世紀最大の猫の祭典を記念して(?)、猫の美に魅せられたアーティストたちの猫愛溢れるエピソードをご紹介。偉人たちは猫のどこに美を見出し骨抜きにされたのか妄想を膨らませつつ、美容界のアーティストやビューティクリエイターたちの猫コスメをご紹介します。
描かずにはいられない!? 猫は最強の美のモチーフ
猫は人類1万年の友。農耕を始めた人類がネズミから穀物を守るためにリビアヤマネコを飼い慣らしたことが始まりといわれる。食糧としての家畜ではなく、猫は猫のまま、人間とウィンウィンな関係の家畜として共に暮らしてきた稀有な存在だ。
Vol.1でも少し触れたが、猫は古代エジプト時代にはすでにペットとしてかわいがられていたことが分かっている。その様子は当時の壁画に残されており、以降、後世に名を残す古今東西の著名なアーティストたちが、猫をモチーフにした名画をたくさん描いてきた。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、サルバドール・ダリ、アンリ・マティス、ピエール・ボナール、アンディ・ウォーホル、藤田嗣治、歌川国芳、河鍋暁斎など、彼らは実際に大の猫好きを公言しており、さまざまなエピソードも残されている。その一部をご紹介しよう。
巨匠から現代アーティストまで。深すぎる猫愛エピソード
現代アーティストのアイ・ウェイウェイは、北京に自身のスタジオを構えたときに猫を飼い始め、一時は30匹以上の猫と共に暮らしていたとか。食材として売るために小さな檻に入れられトラックの荷台に積まれた400匹もの猫たちを仲間たちと分担して引き取り、そのうちの3〜40匹を自宅に連れ帰ったという。どんなに広いアトリエでも、あまりに猫が多いと創作活動に支障をきたしそうだが、「一匹一匹、全く違い、それぞれ違った個性がある。猫たちはいつも幸せな気持ちにしてくれる」と気にも留めない。それどころか、「本能と直感を備えた別の生き物と接するのは大切なこと。心を開いて猫の世界を理解しようとすれば、人間の社会では味わえないことを経験できる。知識など何一つ持っていなくても、幸せな人生を送ることができると猫は教えてくれる」と猫愛深く語っている。
パブロ・ピカソは動物好きでさまざまなペットを飼っていたと伝えられているが、猫も大好きで街を彷徨いていたシャム猫にミノーと名づけ溺愛していたというのは有名な話。写真家で愛人でもあったドラ・マールを描いた「ドラ・マールと猫」、最後の恋人ジャクリーヌ・ロックが猫と戯れる「ジャクリーヌと猫」など、作品にも猫がたびたび登場する。甘えて擦り寄ってきたと思ったらそっぽを向く、いつでも気ままに人間を翻弄する猫は、付き合う女性が変わるたび画風が変わるほどの恋多き男としても知られるピカソにとって、追いかけたくなる女性のような存在だったのかもしれない。
一時期には1ダースの猫たちと暮らしていた猪熊弦一郎。食糧難にあえぐ戦時中に飼っていたみっちゃんという雄猫と、タヌ子という雌猫を疎開先に連れていったり(のちに、みっちゃんが近所の農家で大切に飼われていた鶏を襲って死なせてしまうという大事件が勃発し肩身の狭い思いをする)、猫たちが家の柱で爪研ぎをしても叱ることなく「これは猫の作品だ」と言ってそのままにしたりと、なかなかの猫好きエピソードが多く残されている。猪熊は生前、「猫は一匹、二匹飼うよりも、沢山飼って見る方が其習性が解って面白く、一つ一つを特にかわいがらなくとも、猫同志で結構楽しく生活して居て、見て居ても実に美しい」と語っており、猫たちを写生することはしなかったという。共に暮らし頭の中に住み着いた猫をキャンバスに落とし込むことで、猫らしい自由さや面白さを巧みに表現していたようだ。
人間と出会ったときから、今の今まで己を曲げることなく生きてきた猫は、人間にとって一番身近な野生動物と言っても過言ではない。流麗なフォルム、かわいらしい声、柔らかな毛並み、甘い匂い、表情の豊かさ、ミステリアスな目、時折見せる野生味。いくつもの魅力を秘めた魔性の存在だからこそ、いつの時代も、感性を刺激する美のミューズとして魅了されてきたのだろう。
美容界にも! 猫溺愛クリエーターのビューティアイテム
そんな猫の美に魅了されたクリエーターはビューティ界にもたくさん。今回は、特に猫愛の深いブランドの猫コスメをご紹介!
愛猫家でも知られる勝田小百合さんが手がける「アムリターラ(AMRITARA)」。猫の萌えパーツである肉球をかたどった“オーガニック ハニー クリア ソープ”は、猫のために保護猫活動を支援したいという思いから制作されたチャリティーグッズで、売り上げの一部は保護猫支援団体「AHAHA」に寄付される。オーガニックのオリーブ油やパーム油をぜいたくに使った釜焚き石けんで、ぷにぷにの肉球部分はインド・メルガート地方の原生林で採蜜されたはちみつを氷温熟成したアムリターラの<原生林の黒はちみつ>を使用。カリウムなどのミネラル類を多く含みしっとりとしなやかな洗い上がりをかなえてくれる。
人気ヘアメイクアップアーティストの松田未来さんがディレクションをつとめる「リーカ(RIHKA)」。人気のアイパレットは、8色の中から好みの4色を選んで自分仕様にカスタムできる注目アイテム。こちらは、毎日使いやすいナチュラルな4色があらかじめセットインされたパレット。その中の1色・NAC001 coussinetは、松田さんの愛猫・マドレーヌの肉球カラーを再現した猫愛あふれる可愛らしいピンクベージュ。サラッと軽やかな塗り心地のマットテクスチャーで目元に奥行きを与え、抜け感のある今っぽい目元に。
猫コスメといえば「ポール & ジョー ボーテ(PAUL & JOE BEAUTE)」。モチーフとしてよく登場する2匹の猫は、デザイナーのソフィー・メシャリーの愛猫、ジプシーとヌネット。「私にとって猫はとても美しく、完璧な動物。感情的でいて、凛として独立しているところがとても魅力的」と語っており、インスピレーション源として欠かせない存在であることがうかがえる。そんな彼女の相棒であるジプシー&ヌネットが、ブランド20周年のアニバーサリーイヤーをセレブレートするキュートなコスメで登場。人気の猫リップは、アニバーサリーをお祝いしアーモンドの花を耳に飾っておめかしした特別仕様に。なりたい表情をかなえる全10色をそろえる。どこか懐かしい肌ざわりの人形のような限定リップケースは、ドレッサーに飾って愛でたくなる愛くるしさだ。
画家以外にも、詩人や作家などにも猫好きが多く、さらには北京五輪での勇姿が記憶に新しい羽生結弦も一番好きな動物は猫なのだそうだ。ジャンルを問わず、美を表現する者はどうしても猫に惹かれてしまうらしい。ストイックでミステリアスなイメージのある羽生結弦までも骨抜きにする猫、やっぱり最強!
参考文献
「猪熊弦一郎猫画集 ねこたち」(リトルモア)
The New York Times Style Magazine:Japan「芸術家 アイ・ウェイウェイとモフモフな仲間たち」
ART it「作品「三花」に関する対話 艾未未のことば20:猫が盗まれて広州で食べられる作品「三花」に関する対話」