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連載 コレクション日記

「プラダ」ではキム・カーダシアンと一緒に会場入り!? 2022-23年秋冬ミラノコレ現地リポートvol.2

 こんにちは、欧州通信員の藪野です。ミラノは、日中ならコートなしで身軽に動けるくらいの穏やかな陽が続いています。悪天候続きでどんよりしていたベルリンから来た身としては、それだけで気分が上がります。今回お届けするのは24日のダイジェスト。今日も朝一の「マックスマーラ(MAX MARA)」から夜の「モスキーノ(MOSCHINO)」まで駆け抜けます。まだイタリアに来てから一度もイタリアンを食べていないので、今日こそは!晩御飯に行ける余裕があることを期待しつつ、取材スタートです。

MAX MARA

 今シーズンの着想源は、1910年代半ばに起こった芸術運動“ダダイスム”の中心人物の一人であったゾフィー・トイバー=アルプ(Sophie Taeuber-Arp)。建築家、ダンサー、テキスタイルデザイナー、画家、彫刻家とさまざまな顔を持つ彼女が代表作「キングスタッグ(The King Stag)」のためにデザインしたマリオネット(操り人形)からシルエットのヒントを得ました。

 カギとなるのは、ボリュームのコントラスト。タイトなニットとバラクラバにベルシルエットのフルレングススカートを合わせたファーストルックをはじめ、上半身はコンパクト、下半身はワイド&ボリューミーという組み合わせが目立ちます。そこに合わせるのは、ダブルフェースやテディベア素材、パファーなどを使ったロング丈の主役級アウター。たっぷりとしたリブニットのロングドレスやタートルネックセーターもあり、コージーな雰囲気を醸し出しています。

 デザインのディテールで目を引くのは、マットゴールドのファスナー。ニットの袖の内側やサイド、首元から、ナイロン素材のパンツやキルティングドレスの裾、コートのフロントにまで、装飾的かつ機能的に取り入れられています。バムバッグやヘルメットバッグ、そして、クレープソールのニーハイソックスブーツなど、スタイルの仕上げもアクティブな印象です。

 ショー後にクリエイティブ・ディレクターのイアン・グリフィス(Ian Griffiths)は、「ショーで試みているのは、女性たちの自分らしさやなりたい姿を映し出すこと。インスピレーションを与えると同時に、実際に叶えられることが大切だ」と話していました。今季は、遊び心あるシルエットを取り入れながらリアリティーとのバランスを探求したようです。

PRADA

 「プラダ(PRADA)」の会場前には、驚くほどの人!人!!人!!!今季のミラノコレは、本当にコロナ前に戻ったかのような活気です。ちょうど会場に入ろうとしたら、一際歓声が大きくなったので見ていたら、なんとキム・カーダシアン(Kim Kardasian)が到着しました。タイミング良くバッチリ写真も撮れて、一緒に会場入りしました(笑)。

 ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が今シーズン探求したのは、日々の出来事を記念し、それぞれの瞬間に重要性を持たせること。日常的かつ実用的なアイテムに、意表を突くような華やかな装飾やシルエットを融合しました。キーアイテムは、ファーストルックにもラストルックにも使われた胸元にトライアングルロゴを配した白のタンクトップ、そして異素材を組み合わせたタイトな膝下丈のスカートやタンクドレス。そのデザインは、ビジューやスパンコール、ビーズの刺しゅうが施されたチュールやメタリックメッシュ、クラッシュサテン、ネット、ウール、レザー、リブニットなどをブロッキングしたもので、さまざまなコンビネーションで繰り返し登場します。コントラストカラーのネックパーツをつけた幾何学柄のジャカードニットとのコーディネートも「プラダ」らしさを感じる組み合わせです。

 イブニングウエアを想起させる装飾的な要素は、“男性らしさ”の伝統的な解釈をパワフルなシルエットで際立たせた1月のメンズ・コレクションに通じるアウターにも取り入れ、コントラストを演出しています。例えば、ウエストをベルトで絞ったオーバーサイズのMA-1には、立体的な花のモチーフをたっぷりあしらって華やかに。メンズでもコートやジャケットにアームバンドのようにあしらわれたラムファー風のディテールは、より毛足の長い人工ファーやフェザーを用いてドラマチックに仕上げています。その他のレザーアウターやジャケットにもたくましく角張ったショルダーラインを取り入れ、レディーライクなタイトスカートや折り紙のようなプリーツを施したフルスカートとの対比を描いています。終盤に登場したミニマルなドレスは、テーラリングの技術を応用して肩や腰回りに芯地をボンディング。柔らかな素材に構築的なシルエットをもたらしています。

 そんな今季のタイトルは「プラダのイデオロギー」。ミウッチャが過去に築いた「プラダ」のボキャブラリーを、ラフとの対話によって現代へとつないだ印象です。

MOSCHINO

 コロナ禍のデジタル発表とニューヨークでのショーを経て、「モスキーノ(MOSCHINO)」のリアルショーがミラノに戻ってきました!会場に入ると、そこには1968年にスタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)が製作した「2001年宇宙の旅」のラストに登場する部屋を模したセット。そして、同作のオープニングに使われ、誰もが一度は聞いたことがあるであろう楽曲「ツァラトゥストラはかく語りき」と共にショーが幕を開けました。

 その現実とファンタジーの間のような世界観やフランコ・モスキーノ(Franco Moschino)が1989〜90年に発表したプレタポルテが出発点となったという今季の主役は、豪華な邸宅にありそうなクラシカルな家具や調度品。例えば、ベルベットのソファは、そのディテールを生かしたベアトップドレスやボンバージャケットになり、カーペットは体に巻き付けることでドレスへと変わります。また、「大きな古時計」で歌われているような立派な柱時計や、楽器のハープ、ライオンモチーフのドアノッカーと郵便受けが付いた真っ赤なドアはそのままドレスになり、シャンパンと氷が入ったボトルクーラーはバッグに、ランプシェードや燭台はヘッドピースに。今季もデザインを手掛けるジェレミー・スコット(Jeremy Scott)のユーモアあふれるアイデアが炸裂しました。

 ただ、ウエアのベースとなっているのは、細身なシルエットのスーツスタイルやイブニングドレスといったクラシックかつエレガントなスタイル。前述のフランコのクリエイションを再解釈したカトラリーや蛇口のハンドルの装飾、そして今季の招待状にも使われた鍵穴の形のカットアウトと金の蔦模様をあしらったスーツやドレスといったアイテムは、レッドカーペットだけではないリアリティーを感じさせます。

 フィナーレには、映画の主人公デイブさながら、赤い宇宙服を着たジェレミーが登場。目まぐるしい1日の終わりに、遊び心にあふれた「モスキーノ」のショーに元気をもらいました。

おまけ:今日のワンコ

 本日は「プラダ」の会場に向かう道中でミニチュアピンシャーのデイジーちゃんをキャッチ。動き回るのでブレブレですが、人懐こくて激キャワでした。


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◇2022-23年秋冬コレクションレポート

登壇者:向 千鶴/WWDJAPAN編集統括 兼 サステナビリティ・ディレクター
藪野 淳/WWDJAPAN欧州通信員
モデレーター:村上 要/WWDJAPAN編集長

【第2部】50分 14:40~15:30
◇国内マーケット展望

登壇者:五十君 花実/WWDJAPAN副編集長
ゲスト登壇者:神谷 将太/三越伊勢丹 婦人・雑貨・子供服MD統括部 新宿婦人営業部「リ・スタイル」バイヤー
モデレーター:村上 要/WWDJAPAN編集長

【第3部】50分 15:40~16:30
◇どう着る?どう魅せる?スナップなどから探るスタイリング提案

登壇者:向 千鶴/WWDJAPAN編集統括 兼 サステナビリティ・ディレクター
藪野 淳/WWDJAPAN欧州通信員
ゲスト登壇者:シトウレイ/ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト
モデレーター:村上 要/WWDJAPAN編集長

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