ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、オーガニックコスメやサステナビリティを主題においた店舗の話。
【賢者が選んだ注目ニュース】
「ビープル バイ コスメキッチン」がショップ名を「ビープル」に変更
グウィネス・パルトローの「グープ」が日本でECとメディアをオープン
「コスメキッチン」が2004年に代官山に1号店をオープンしてから20年近くがたつ。手に取りやすい価格やおしゃれなパッケージのブランドをセレクトしたカジュアルな店構えは、それまで質素なイメージだったオーガニックコスメを、楽しく親しみやすいものにした。日本初上陸のブランドをいち早く導入するなど、オーガニックコスメブランドのインキュベーターとしての役割も大きい。昨年5周年を迎えた「セルヴォーク」をはじめ、「トーン」「スナイデル ビューティ」などのPBは、いずれもトレンドをけん引するブランドに成長を遂げた。
ビューティからはじまり、ライフスタイルへ サステナビリティ発信を拡大するマッシュHD
13年に「オーガニックなライフスタイルを提唱する新業態」としてスタートした「ビープル バイ コスメキッチン」は、ライフスタイル提案型ショップのパイオニアだった。飲食業態、近年ではCBD、フェムテック関連製品をいち早くセレクトし、ビューティ&ウエルネス領域にも進出。20年末には三軒茶屋に業態初の路面店をオープン。非接触型の販売スタイルやショップからのライブ配信など、オーガニックなライフスタイルの発信基地の役割を担ってきた。
10年の間、というよりここ2年ほどの間で急速に、世の中の価値観は「ビープル」の提唱するライフスタイルに近づいた。ジェンダーや年代の垣根を越えたビューティ、ナチュラルな素材を取り入れた内側からのインナーケア、瞑想やアロマによるメンタルケアは、すっかりわれわれの日常に定着したといえる。しかしその一方で「オーガニック」「サステナブル」「クリーンビューティ」といったワードが明確な基準・定義を持たないまま独り歩きし、安易に使われてしまっている現実もある。
コスメキッチン事業において長くディレクターを務めた小木充氏、「セルヴォーク」を立ち上げて大きく成長させた田上陽子氏の両人が昨年末に退社したことは大きな驚きだったが、同時に発表されたマッシュホールディングスの新体制からは、一つの企業としてアパレル・ビューティ・ライフスタイルをよりシームレスにつなぐ意図も感じられる。阪急百貨店うめだ本店にこの4月にオープンする、マッシュホールディングスの5ブランドを集積したフロアでは「サステナビリティ」を打ち出し、「コスメキッチン」で回収した空き容器をリサイクルした素材を活用するという。ビューティの分野で「オーガニック」を定着させたマッシュグループは、さらに広い分野で「サステナビリティ」を伝える段階に入っているのだと思う。
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