東京都と日本ファッション・ウィーク推進機構が主催する「東京ファッションアワード 2022(以下、TFA)」の受賞8デザイナーが、2022-23年秋冬「楽天 ファッション ウィーク東京(以下、東コレ)」期間中に公式会場の渋谷ヒカリエにてフィジカル形式で新作コレクションを発表した。「TFA」は、東京を拠点とするファッションデザイナーの海外での展開をサポートするために2014年に創設されたアワードで、これまでに総勢50人のデザイナー、44のブランドを選出。デザイナーの海外ビジネスを支援する国内随一のアワードとして知られる。
「TFA」最大の特徴は、国内外の有力バイヤー及びバイヤー経験者が審査員を務めることだ。選定基準は、世界で活躍する品質であるか、ポテンシャルがあるか。さらに応募資格として、 1.東京をビジネスの拠点にしていること 2.海外市場開拓に意欲があり体制が整っていること 3.セールスを3シーズン以上行っていることが求められる。
小売の現場ならではの視点で選ばれたブランドは、パリ・ファッション・ウイーク期間中に開設される「ショールーム・トーキョー」に最大4シーズン継続して出展することができる。過去受賞者には「ファセッタズム(FACETASM)」「ダブレット(DOUBLET)」「チルドレン・オブ・ザ・ディスコーダンス(CHILDREN OF THE DISCORDANCE)」などが名を連ね、世界各国のバイヤーにも「注目の東京ブランドが集まるショールーム」という認知が広がっているという。第1~3回のアワード受賞者は、パリ・メンズ・ファッション・ウイーク期間中に現地で展示会を開催。第4~6回は、展示会に加えて、イタリアの「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMAGINE UOMO)」にも参加した。7回目(「TFA 2022」)からは、新たにウィメンズ部門の募集を開始。2月末~3月頭と9月末~10月頭のパリ・ウィメンズ・ファッション・ウイーク期間中の支援が加わり、“東京ブランド”の海外発信をさらに強化する。
「TFA」の企画・運営に携わる田中大海・伊藤忠ファッションシステム 第1ディビジョン マーケティング開発第3グループは、「今回が大きなターニングポイントになった」と語る。「募集デザイナーを拡充し、エントリー数は従来比の2倍近くとなり過去最高となった。 3月に実施した東コレでのコレクション発表イベントも反響が大きく、エンドユーザーにまで認知が広がった感覚だ」。海外で販路を広げるデザイナーに共通するのは、「あくまで『TFA』をビジネス拡大のステップアップと捉えている」こと。「『TFA』を起点に、さらに具体的なビジョンを持って邁進するデザイナーや、ここの支援に加えてプラスアルファのアクションを起こしている人が、海外でのビジネスを伸ばしている印象だ」と話す。
次回エントリーを考えるデザイナーにエールを送る。「自身のプランニングや『TFA』の募集要項に沿うかなど不安な人も多いと思う。しかし、興味がある人はぜひ応募してほしい。日本のマーケットは海外と比較しても非常に細分化されており、かつ日本の人口分布的にも縮小は免れない。グローバルマーケットの重要性を感じているデザイナーには『TFA』にチャレンジしてもらい、フィジカルな展示会やショーにしかない“パワー”を感じ、自身のビジネスに活用してほしい」。