ファッション

SNSでバズる「#骨スト優勝服」って何? 骨格から服を作るアパレルD2Cが話題

 近年、SNSを中心に「骨格診断」が話題になっている。骨格診断とは、生まれ持った骨格によるスタイルの違いから、その人に似合う服の素材や形などを知るもの。骨格タイプは協会によりさまざまに区分されるが、日本ではストレート・ナチュラル・ウェーブの3タイプが主流だ。インスタグラムでは「#骨格診断」の投稿が32万件を超え、AMFが発表した「JC・JK流行語大賞2021」ではモノ部門の第3位に入った。

 複数のD2Cブランドを運営する3rdは2021年3月、骨格ストレート向けブランド「レオニー(REONIE)」をローンチした。ブランドは骨格診断などのイメージコンサルティングを行うRAN・ビモーレ(Bimore)オーナーが監修し、シーズンごとにオリジナル商品を受注販売するほか、週1回ほどセレクト商品を発売する。

 中田小百合ブランドマネージャーは「ブランドの立ち上げは、私自身が診断サロンに行ったことがきっかけ。骨格ストレートと診断されたが、ネットで検索してもメディア記事しか出てこない。服が買える場所があったらいいのにと思い、診断してもらったRANさんに監修して欲しいとDMでお願いした」と振り返る。骨格ストレート当事者である中田ブランドマネージャーの思いは同様の悩みを持つ人に刺さり、リピート率は約50%とファンの支持を受けるブランドとなった。

 骨格ストレートは、日本人に多い骨格といわれる。厚みのある体型でメリハリのあるボディーラインである一方、トレンドの服を着ても着太りして見えるなどの特徴があり、服選びで悩む人も少なくない。そのためSNSでは「骨スト優勝服(骨格ストレートに似合う服)」の情報が盛んにやりとりされている。こうしてSNSで取り上げられる服は「グレイル(GRL)」や「シーイン(SHEIN)」など、リアル店舗を持たないECサイトのアイテムが多い。“試着できないけど失敗したくない”“何を選んでいいか分からない”という悩みに、骨格診断は適している。

 RAN・ビモーレオーナーは「ダイエットをしても理想の体型になれないと悩む人もいるけれど、憧れの人と自分は骨から違う。別物だと知ることで、自分の体型を生かす考えに変えられる。自分の良さを知れる診断だ」と話す。骨格診断を含め、パーソナルカラー診断や顔タイプ診断などのイメージコンサルティングは、“自分の良さを生かすツール”なのだ。

パタンナーは悲鳴? こだわりの多い“骨スト優勝服”

 シーズンごとのオリジナル商品は、昨冬は4型、今春は2型を発売。毎回骨格ストレートの悩みを解決する服として企画しており、ブランドファンから意見を募るほか、骨格ストレートに関連するインフルエンサーとのコラボも実施した。

 骨格診断では首元の開き具合やスカートの丈、オーバーサイズかコンパクトか、ネックレスの長さ、バッグのサイズ感、素材の厚みまで似合う形を見つけられる。例えば骨格ストレートはハリ感のある素材が得意で、チュールやレースのように柔らかい素材は苦手だ。中田ブランドマネージャーは「骨格ストレートに似合うものを集めるとシンプルな服が多くなる。しかし、そういうものは既に世の中にあるので、『レオニー』で揃える必要がない」と話す。作るのは、主に“着たいけど着れなかった服”だ。

 例えばユーチューバーのEmilyとコラボした「フラワーレースタイトスカート」は、苦手な繊細なレースを得意なハリ感のある生地に重ねることで着やすくした。また腰回りのボリュームを抑えるためにウエストゴムは使用しない、前後のダーツですっきりしたIラインを作るなど、細かくこだわる。

 またパンツにはシンプルなデザインもあるが「ストレッチ素材だと前モモのハリ感が出やすくなるので、ストレッチが効かないくらいの生地を使った。角ばった“ピーマン尻”の悩みが多いので、お尻が上がって見えるようにもこだわった」と中田ブランドマネージャー。

 細かく多岐にわたるこだわりの影響で、多くの場合、サンプルは5回ほど作成する。中田ブランドマネージャーは「パタンナーは骨格診断の知識が豊富ではないし、アパレルの基準サイズから外れる要望も多く、当初はすり合わせが大変だった。ハリ感を求めて生地を変えると一から作り直し。『これ以上は無理です』と言われることもあった。ボツになった商品もある」と苦労を語る。そのためオリジナル商品は1万円以上の高単価商品が多く、手頃なセレクト商品とのセット販売も好評だという。

アパレルブランドなのにSNSで「ブランドイメージを出さない」

 そもそも骨格診断はSNSで広まったトレンドで、「レオニー」もSNSを流入元として成長する。アパレルブランドの多くはSNSでブランドイメージを発信するが、骨格ストレート向けブランドということもあり、中田ブランドマネージャーは「ブランドイメージはあえて出していない」と話す。

 ブランドの服作りのコンセプトは、“自分に似合う服とともに自分らしい魅力を引き出す”こと。カジュアルからコンサバまで、アイテムのテイストはバラバラだ。ブランドの試着会に参加するファンは学生から50代まで幅広く、生活スタイルやファッションスタイルも異なる。

 イメージの代わりに発信するのは、情報だ。ツイッターでは8700フォロワーを抱え、「“骨スト優勝”に関する話題はツイッターの方が多い。ブランドアカウントでは骨格に合う服装について比較ツイートを投稿したところ、バズを生み出せた」と中田ブランドマネージャー。時には「自社商品の話だけをしているとフォロワーは離れていく。チームでも意見が割れたが、結果的にブランドを知ってもらうきっかけになった」と他社の骨格ストレートに似合う商品を紹介することもある。

 こうして集まった骨格ストレートのファンとの交流も盛んだ。中田ブランドマネージャーは「そもそもどんなものが欲しいか、デザインはどちらがいいか、イラストなども提示しながら意見を聞く。SNSだけでなく、試着会に来場した方にも投票してもらう」と、ファンの意見を重視する。ブランドは交流や情報発信を通じ、骨格ストレートという同属性の人たちが集まる、一種のコミュニティとして機能している。このような高いエンゲージメントが、ブランドの成長に繋がっている。

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