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現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由

 トップモデルとしてキャリアを積んだSAWAが、2021年12月にメンタルメイクコーチング「ゆうなぎ(YOUNaGI+)」を設立した。モデルとして表舞台に立ってきたキャリアと、私生活では母親である経験を生かし、モデルやタレント、そして彼らを支えるマネジャーたちに向けて段階別のコーチングコースを設け、対話を重ねながら受講者の目標達成やメンタルをサポートしている。

 “コーチング”とはコミュニケーション手法の一つ。相手との対話や質問を通して、本来持っている能力や可能性を最大限に引き出し、目標に向けてモチベーションを高めるというもの。さまざまな悩みを抱えている人々に寄り添う彼女に、コーチングを身につけることの大切さや、厳しいモデル業界で苦労したこと、そこから得た気づきなどについて話しを聞いた。

WWD:「ゆうなぎ」をはじめたきっかけは?

SAWA:モデル業は常に自分と向き合っていないといけなくて、現場だけが仕事ではないんです。当時の私は仕事について一日中考えることが当たり前になっていて、心から楽しめていませんでした。楽しむよりも、全力投球で仕事に臨むことにしか目を向けられていなかったんです。あのときにセルフコーチングを身につけていたら、もっと心に余裕が持てて、自分を上手くコントロールしながら楽しめたんじゃないかなと。だからこそ、自分を育ててくれたこの業界で私にもできることがあると思い、「ゆうなぎ」を立ち上げました。自分と向き合うのを辛く感じているモデルたちをサポートすることで、モデルという仕事をもっと楽しんで、自分らしさを見つけてほしいです。

WWD:コーチングに出合ったのはいつですか?

SAWA:不妊治療を経て、無事に生まれてきてくれた長女が重度の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎持ちであることが分かったんです。食べられるものが制限されるため、食物アレルギーについて学んではみたものの、なかなか苦労が多くて。育児に悩んでいるときに友人に紹介されたのが子どものコミュニケーション能力を学ぶマザーズコーチング(母親のためのコーチング)でした。スクールを受講して、自分のこれまでの価値観や考え方などが大きく覆されて、そこから学んだことが本当に多かったですね。その体験をきっかけに、よりたくさんの子どもや子育てに悩むママたちの助けになりたいと思い、資格を取りコーチとしての活動も始めました。

孤独と不安に押しつぶされた過去

WWD:コーチングに出合う前、自身もメンタルヘルスへの影響がありましたか?

SAWA:当時の私は精神的に完全に壊れていましたね。摂食障害になったり、急に不安や恐怖に駆られたり。うつ病の一歩手前までになったこともありました。モデル業は華やかな印象ですが、実はとても孤独な職業なんです。オーディションに行かないと仕事はもらえないし、仕事が保証されているわけでもありません。オーディションに落ち続けていると、自分自身を否定されている気持ちになることもありましたね。その仕事がダメだっただけなのに、私の全てを否定されているように捉えてしまっていました。

WWD:そんな時、支えてくれたものは何だったのでしょうか?

SAWA:モデルとしての自分を確立できたのは、マネジャーのおかげです。私が悩んだ時に、自分以上にモデルとしての価値や良さを教えてくれました。一番最初のマネジャーに「SAWAにしかないものがある」「SAWAを選んでくれる人はずっとあなたのファンでいてくれる」と言われた言葉に強く背中を押されましたね。自分の可能性を自分以上に信じてくれる人が一人いるだけで、すごく励みになりました。自分一人だと不安になりますが、周りからのエネルギーが加わると、「やるぞ!」という強いパワーを与えてくれるんです。

WWD:厳しいモデル業界を経験して得たことは?

SAWA:私は完璧なモデル体型ではないので、海外でもキャスティングに入るかギリギリなんです。それでもこの業界で勝ち残っていくには、周りや時代に合わせるのではなく、個性を出していくことが一番大事だと気づきました。キャスティングのオーディションでは、会場に入った瞬間からジャッジされることがほとんどなので、その短い時間の中で自分らしさをどう表現するかが重要なんです。だからこそ、若い子たちにもコーチングについて知ってもらい、個性を発揮できるように自分自身と向き合えてもらえるとうれしいです。

WWD:実際にどんな悩みを抱えている人が多いですか?

SAWA:自分で自分の不安の正体が分からず悩んでいる人が多いですね。ゴールが見えない状態でも日々がむしゃらに走り続けて、自分で自分を追い詰めてしまっているんです。そんな彼らの孤独や不安をなくし、本当にやりたいことや個性を理解した上で、課題に向き合うプロセスを提案していきたい。無意識に周りや時代に合わせて自分の中の正解を見つけることよりも、まずは自分が持っている思考癖を理解し、うまく付き合っていくことが大切ですね。

WWD:モデルであり、母であるバッググラウンドを今の仕事でどのように生かしていますか?

SAWA:モデル業を通していろいろなクリエイターやスタッフと関わり、さまざまな価値観や考え方を自然に吸収できたので、多角的な視点を持ちながらアドバイスしています。そして、母になってからは“待てる”ようになりました。今までは子どもに「それはダメ」「こうしなさい」と注意していたのが、いろいろ経験させることで本人が学ぶ機会を得られるのかなと徐々に思えるようになっていったんです。子どもも一人の人間として見ることで、距離感をうまく保てるようになりましたね。親子や夫婦関係に悩んでいる講習者もいるんですが、自分の経験を通して寄り添うことを大切にしています。

自分の価値観を問うこと

WWD:SAWAさんがメンタルヘルスを維持するために心掛けていることは?

SAWA:自分自身に問いを持つことを意識して、セルフコーチングを心掛けています。自分がこうやって話している時も考えながら話しているんです。「あの時、この言葉を選んだけれど、どういう気持ちで言ったんだろうか」など、自分の価値観を問うようにしています。人が話している言葉もそのまま受け取るのではなく、一歩引いて、相手の感情をさまざまな視点で考えられるようになり、ぶつかることもなくなりました。

WWD:今後のプロジェクトについて教えてください。

SAWA:モデル業界をサポートすると同時に、後輩たちの目標となれる存在でありたいです。また小・中学生を対象とした“たいわ室”という講習も行っているので、彼らが大人になった時に「自分自身を追い込まずに、誰かに頼ってもいいんだよ」と気づけるようにしてあげたいですね。コーチングを身につけて、心の孤独を持たない子どもたちが増えてくれることを願います。

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