エルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP以下、ゼニア)の2021年12月通期決算は、売上高が前期比27.3%増の12億9240万ユーロ(約1744億円)、営業損失は前年の2255万ユーロ(約30億円)から9402万ユーロ(約126億円)へと拡大し、純損失も前年の4654万ユーロ(約62億円)から1億2766万ユーロ(約172億円)へと拡大した。
なお、同社は特別買収目的会社(SPAC)であるインベストインダストリアル・アクイジション(INVESTINDUSTRIAL ACQUISITION CORP.)との合併によって21年12月20日にニューヨーク証券取引所に上場しており、純損失の拡大には合併や上場に伴う費用2億500万ユーロ(約276億円)などの非資金損益項目が影響している。これらの調整後の純損益は7500万ユーロ(約101億円)の黒字だった。
ブランド別に見ると、主力の「ゼニア」の売上高は同23%増の10億3500万ユーロ(約1397億円)、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」は同47%増の2億6400万ユーロ(約356億円)だった。
ジルド・ゼニア(Gildo Zegna)会長兼最高経営責任者は、「21年は当社にとって素晴らしい年となった。私の祖父が111年前に創業した当初から受け継がれているブランド価値を大切に守りつつ、現在も成長し続けていることを大変誇らしく思っている」と語った。同氏はまた、「ウクライナの悲劇的な状況に深い悲しみを覚えている」と述べ、同国からの避難民30人を工場で雇用することを明らかにした。
22年の展望については、「コロナ禍の影響による外出規制の解除後、欧州での売り上げは大幅に回復し、米国とアラブ首長国連邦での事業も好調だ」として、12~14%の成長を見込んでいると説明した。
ゼニアは上場の準備を進めていた21年8月にランサムウエアによる攻撃を受けている。これは有害なプログラムによってコンピューターをロックしたり、ファイルを暗号化したりして使用不能にした後、元に戻すことと引き換えに“身代金”を要求するもの。同社もITシステムの大半が影響を受けたものの、犯人側からの接触に応じなかったため、犯人側が不正に入手した財務情報などを漏えいされた。同社はそれでも“身代金”の支払いを拒否し、ITシステムが侵害されたことを公表した後、バックアップサーバーなどからデータを回復したという。