細川雄太の「レディメイド(READYMADE)」は5月に、スイスの高級時計「パーネル(PURNELL)」とコラボした複雑機構トゥールビヨン搭載の機械式腕時計“レディメイド × パーネル エスケープⅡ(READYMADE × PURNELL ESCAPE Ⅱ)”を発売する。
“エスケープⅡ”は、世界最速3軸トゥールビヨンである“スフェリオン”を2つ搭載した「パーネル」の代表モデル。コラボモデルは、カーボンラミナ(税込み6825万円)、ホワイトパーネルマクロファイバー(同6900万円)、サファイア・クリスタル(同1億8450万円)の3種類のケースから選べ、最高級モデルは1億円を優に超える。ストラップの素材には、「レディメイド」の代名詞でもあるビンテージのミリタリーテントを採用。左側のバレル、リューズ、ケースバッグリング、バックル、専用ボックスに“READYMADE”のロゴを入れ、右側のバレルには、エジソンが残した「Time is really the only capital that any human being has and the thing that he can least afford to waste or lose.(時間は人間に与えられた唯一の資本であり、無駄にしたり失ったりしないよう努めるべき)」という哲学を刻印した。ファッションブランドとしては異例の超高級時計コラボについて、細川デザイナーに聞いた。
――「レディメイド」として、初の時計のデザインに何を心掛けた?
細川雄太デザイナー(以下、細川):「レディメイド」にはミリタリーアイテムを解体することで、反戦のメッセージを込めている。そのコンセプトを踏まえた肯定的なデザインにしたくて、希望を虹色で表現した。
――今回もベルトにビンテージのミリタリーテントを使っている。時計自体には、リサイクル素材を取り入れようと試みた?
細川:時計自体は「パーネル」が素晴らしい技術を持っているのでプロに任せて、僕は外装のデザインだけ。どうすれば「パーネル」のブランドイメージと「レディメイド」のブランドイメージが中立でいられるかをすごく考えて、お互いの良いところをとった感じ。
――最もこだわった点は?
細川:色のバランスかな。ベルトがカーキなので、それに合わせて、“スフェリオン”をオレンジとグリーンにした。それと、ビンテージウオッチから持ってきたカラーパレットを使っている。経年変化で焼けたような色合いと、宝石の色のバランスを見ながら、「パーネル」らしいカラーリングをイメージした。
――時計と他のアイテムとで、デザインの思考に違いはあった?
細川:時計の中身を知り過ぎるとデザインできない気がしたので、あまり意識していない。知らないから挑戦できるデザインもある。
――細川さん自身は、時計に機能性や実用性を求める?
細川:正直、機能は全然必要ないと思っている。僕は、普段ビンテージウオッチをしているけど、これに対して「タッチパネルだったらいいのに」とか思ったことがない。ビンテージの不便なところはいっぱいあると思うけど、それがいい。どこが良いかの理由はないと思う。だから今回も機能ではないところで魅力的に感じる時計を作りたかった。
――あらためて、1億8450万円の時計をデザインしてどう思う?
細川:時計の世界の話を聞いたら、そういう世界もあるのかなと、だんだん実感が湧いていった。僕にとってはめちゃくちゃ高いけど、NFTとかを見ているとそれ以上の値段でも売れているものがたくさんあって、不思議な感じだった。一度だけ実物を腕につけたのだけど、全部が宙に浮いていて、本当に“宇宙”みたいですごかった。
――細川さんにとって時計とは?
細川:仕事中は重いので外してしまうけど、人と会うときには必ず着けるので、僕にとってはパンツをはくのと同じような感覚(笑)。