3DCGを活用したアパレルメーカー向けの商品サンプル作成サービス「ストゥーラ(STURE)」がこのほどスタートした。サービスを提供するforGIFT(東京、白井崇文社長)は、親会社クリーク・アンド・リバーのゲームグラフィックの開発ノウハウに、長らくアパレル業界に携わってきた白井社長の知見を掛け合わせることで、リアルに近い高品質な3DCGサンプル制作を可能にした。白井社長は「(3DCGサンプルの活用で)ムダな費用を減らせば、“攻め”に転じる資金余力が生まれる。多くのアパレルが構造改革が迫られている今だからこそ、業界が生まれ変わる手助けをしたい」と語る。
3DCGサンプルの導入は、商品の企画、製造、販売に至るまで、サプライチェーンにおけるさまざまなプロセスでコスト削減などの効果が期待できる。白井社長は具体的なメリットを次のように挙げる。
・リードタイムの短縮:発注から通常1カ月程度かかるサンプル製作が数日程度に短縮。企画から販売開始までを縮め、商品の販売期間を延ばすことができる。
・サンプルの精度向上:サンプル製作の過程をリアルタイムで共有・確認できるため完成品の精度が向上。何度もサンプルを作成する時間的・資金的コストを抑制できる。
・ECの「ささげ」業務の簡略化:精巧な3DCGサンプルをそのままEC商品ページに掲出することで、実物を撮影する手間が省ける。ECでの事前予約商品は販売機会の延長が期待できる。
白井社長はこれまでメンズブランドの運営やOEM(他社ブランドの商品製造)などを手がけ、それ以前にはアーティストの衣装制作やホテルのタキシードデザインなどモノ作りの現場でも経験を積んだ。「アパレルビジネスの首を絞めるのは販管費だ。ビジネスの規模を拡大すれば人件費や設備費の膨張は必然で、それは業績が悪くなっても変わらず肩にのしかかるもの。このような状況を打破するには、デジタルをテコに、サプライチェーンそのものを変革していかなくてはならない」と語る。
3DCG開発チームの自社構築は
「本末転倒になりかねない」
「ストゥーラ」は撮影スタジオや最新の機材、3DCG専門の開発チームなど、クリーク・アンド・リバーのリソースをフル活用することで、シーズン単位のまとまった数のサンプル受注にも対応できる。服の素材やシワなどの表面感、フォルムなどはクライアントとすり合わせながら、可能な限りリアルに近づけていく。納品後も、ECやオンライン商談などへの導入・活用を支援する。すでに大手メーカーと共同でサービスの実証実験を終え、コスト削減効果も検証した。「ケースバイケースではあるが、サプライチェーンに関わるさまざまなコスト全体のうち20%程度の削減が見込める」という。
アパレルメーカーが3DCGサンプル開発チームを自社で構築するという選択肢には、「人材面も設備面も大きな投資が必要になり、『コストを抑制する』という目的が本末転倒になりかねない」と警鐘を鳴らす。「だからこそ僕らに手助けできることがある。導入いただいた企業さまには、まずは小規模なブランドや一部商品でテスト的にスタートし、コスト抑制効果に納得した上で導入を拡大してもらう。(3DCGサンプルの導入が)絵に書いた餅にならないよう、できる限り伴走する」。
長期的な展望としては、「3DCGサンプルによるバーチャル試着システム」や「アバターコスチュームを活用したリアル商品のテストマーケティング支援」のほか、ゲームやアニメなどのエンタメやカルチャーと結びつけた事業などを構想する。ただ白井社長は「3DCGというとメタバースやNFTというバズワードを連想しがちだが、それは次のステップ」と強調する。「企業が新しい分野で戦うための力(資金)を生み出す、サプライチェーン改革に3DCGを活用する。まずはここに僕らのやるべきことがあると考えている」。