REPORT
「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の2016-17年秋冬メンズは、すっかり恒例となったオートクチュール、メンズにも導入した究極の手仕事によるスペシャルピースで幕を開けた。今回のクチュールは、原点回帰ともいえるブラックフォーマル。ソフトな生地で作るチェスターコートやジャケット、センタープリーツのストレートパンツは、職人の手作業による縫製のせいか、一層ニュアンスを増し、ピークドラペルのジャケットでさえ、周りを威圧するようなムードは皆無。自然に、それでいてエレガントに、男性の体に馴染んでいた。
プレタポルテは、ソルト&ペッパーのような生地で作ったスイングトップやチェスターコートに、パンクにブランドのアイコン、スタッズを打ち込んだスタイルから幕を開けた。レザーのライダースや、モヘアでチェックを描いたカーコートやステンカラーコートなど、序盤はフォーマルにロックやパンクのテイストをほんのりプラス。ここから、全81ルック、実にほかのメゾンの2倍強に相当するルックを送り出して見るものを圧倒した「ヴァレンティノ」劇場は、目まぐるしい勢いでスタイルを変えていく。ロック&パンクに続いたのは、トライバル。ブラックフォーマルの上に、半球状のホワイトスタッズを打ち込み、まるでナスカの地上絵のような、目玉や唇、手のひらなどのミステリアスなモチーフをプラス。その後は、正統派のフォーマルに舵を切り、ニードルパンチでキャメルとブラックをつないだニット&コートなどが続く。合間には随所随所にパテントレザーで作るボンバージャケットや、チュニック丈のレザーシャツ、首元に幅広のレザーベルトをあしらったステンカラーコートなどを加え、ハードエッジを覗かせた。
カーキ色のミリタリー、そしてデニムのワークに続いたのは、再び、トライバルだ。インターシャ、生地を小さな四角形や三角形に切り出し、それを複雑に組み合わせることで柄を描く技法を駆使し、ウールのボア付きカーコートやネルシャツ、そしてスイングトップなどを提案。タイダイでヒッピーライクなポンチョ、スエードのカウボーイシャツ、そして、バッファローチェックのレザーブルゾンなど、ウエスタンのテイストを盛り込み、ワークシルエットの5ポケットデニムを合わせた。そこには、圧倒的な手仕事による装飾をふんだんにのせて、クチュリエブランドのプライドを表した。ブラックフォーマルからパジャマシャツなどのリラックス、そして、若々しさにあふれるカジュアルまで。あらゆるアイテムが勢ぞろいする。圧倒的な想像力と手仕事で、今シーズンもライバルを寄せ付けない。