Z世代のファッションアイコンとして活躍するkemioは、オフィシャルグッズを制作する「ケミオ ストア(kemio store)」の初となるポップアップストアをラフォーレ原宿で5月15日まで開催中だ。同店ではアーカイブ品や限定商品のほか、プレイステーションゲーム「パラッパラッパー(PaRappa the Rapper)」とのコラボアイテムを販売している。限定店の開催に合わせて、「ケミオ ストア」を手掛けるファッションメーカー、コネクトインターナショナルの小林翔太取締役とkemioに、ブランドのクリエイティブについて聞いた。
WWD:kemioさんとの協業のきっかけは?
小林翔太(以下、小林):日本のアーティストグッズはファンのためという意味合いが強く、洗練されたものが少ないですよね。一方、海外ではグッズをブランドやクリエイターとコラボして作るケースも多く、日常的におしゃれに着られるアイテムがたくさんある。それを見て日本のグッズの常識を変えたいと思い、ファッショナブルでクリエイティビティー溢れるkemioさんに声をかけました。
WWD:最初にオファーが来たとき、どう思った?
kemio:お話をもらった時はすごくうれしかったし、自分のグッズを出せるんだとワクワクしました。これまでもファッションブランドをプロデュースしてほしいというオファーが届くことはあったけど、僕は洋服を作る知識がないので、ファッションブランドをやるのは失礼じゃないかと。でも、自分のグッズはずっと作りたかったので、「ケミオ ストア」は、ぜひやりたいと思いました。
WWD:kemioさんの仕事ぶりで印象的だった一面は?
小林:メンバーのモチベーションを上げるのがすごく上手です。kemioさんは意識していないのでしょうけど、こちらが企画したものを褒めてくれるんですよ。そういうリアクションは素直にうれしいですね。そんな人柄が魅力的なので、われわれもkemioさんのためにもよりいいブランドを作ろうと意欲が湧いてきます。
WWD:「ケミオ ストア」のものづくりのこだわりは?
kemio:やっぱ自分が着たいかとかですかね。自分自身が身につけないアイテムを「はいどうぞ」っていうのは違うなと思っていて。作ったものを自分で着用している姿を発信してみんなに楽しんでほしいので、自分が着たいかや欲しいかは結構大事に考えちゃうかもですね。
小林:デザイン面では、kemioさんが大事にしている幼い頃に憧れていた世界、今で言うY2K時代のカルチャーを落とし込んでいますね。結果として「ケミオ ストア」は未来的でありながらノスタルジックな世界観を持つブランドになっています。そんな世界観にkemioさんと同世代の方が共感してくれて、絆が生まれていると感じます。
販売しているアイテム以外でも世界観作りはこだわっています。例えばウェブサイトも訪れた人が何番目のお客さまか分かる、昔懐かしの仕様にしています。キリ番になったお客さまがスクリーンショットを撮ってSNSにアップしてくれて、また認知の拡大につながるということもありますね。
子供の頃に体験できなかった
憧れの世界
WWD:kemioさんがその時代のカルチャーに憧れるのはなぜ?
kemio:小さい頃に出合って憧れたものって、自分の中にずっと住み着いているんですよね。子供の頃はSNSがなかったから雑誌やテレビの世界を見て育ったけど、僕は幼くて実際にその世界や文化を体験できなかった。だから、大人になった今も憧れ続けているんだと思います。お金を稼げるようになってからは、子供の頃に買えなかった「エンジェルブルー(ANGEL BULE)」のアイテムをメルカリで買っていますね。
今回コラボした「パラッパラッパー」も、まさに子供の頃に憧れていた世界。1990年代後半にプレイステーションのリズムゲームが流行ったり、フジテレビで放送されていたアニメが放送されたりしていたのを見ていました。マクドナルドのハッピーセットで登場したおもちゃも集めていて、作品の何でもアリみたいな世界に憧れていましたね。
WWD:今回ラインアップされたなかでも特にkemioさんが気に入っているアイテムは?
kemio:第1弾で作った青地にレインボーのロゴが入ったTシャツは「ケミオ ストア」のアイコニックな商品になりつつあって、思い入れがあります。“kemio store”のロゴは最初はシンプルだったんですけど、僕が個人的に異次元空間みたいなのが好きなので、歪ませてもらったんです。
WWD:「ケミオ ストア」のアイテムには、海外からの反応も集まるとか?
小林:最初のコレクションでガラケーと宇宙を組み合わせたようなグラフィックのTシャツとフーディを作ったのですが、これは特に海外の方からも褒められましたね。ギャル文化に通ずるところがあるのか、「ヤバイね!」みたいなリアクションが英語でたくさん届きました。あと名前は出せませんが、海外のラグジュアリーブランドがやっているセレクトショップから、商品を卸してほしいとオファーがありましたね。
WWD:「ケミオ ストア」の今後の目標は?
小林:メタバースにも進出したいです。ラグジュアリーブランドではすでに参入しているブランドもありますが、グッズストアはまだないはず。いち早く投入できたらいいですね。
あと、“モノからコトへ”と言われた時期がありましたが、今は“コト消費”からさらモノにつながっている気がするんです。体験を通して得たモノを大切にしたり、見たりするだけで元気が出ることってありますよね。モノを通じて生まれる絆ってやっぱり強いんです。だから「ケミオ ストア」も、今後もアイテムを通して価値を提供できる存在であり続けたいです。
■「ケミオ ストア」ポップアップ
会期:5月7〜15日
場所:ラフォーレ原宿2階 コンテナ
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6