ファッション

フランスの国民的子ども服ブランド「プチバトー」が描く自然との共生 古着の回収再販プロジェクトを日本でも目指す

 1893年にフランスのシャンパーニュ地方で生まれたフランスの子ども服ブランド、「プチバトー(PETIT BATEAU)」は、母国では国民的ブランドとして130年以上にわたって愛されている。ギヨーム・ダルーゼ(Guillaume Darrousez)最高経営責任者(CEO)は、「フランスでは、ファミリーブランドしての認知度はナンバーワン。みんな知っていて、特に何かをしなくてもビジネスは順調」という。一方の日本は、「同じ認知度ではなく、違うものを目指す」。「子供たちと自然をつなぐ」を世界共通のミッションに策定し、サステナブルを「プレイフル」に発信するブランドを目指す。フランスで始めた古着の買い取り&再販のほか、ワークショップにも意欲的だ。

WWD:フランスで始めた古着を回収して再販するリサイクルプロジェクトの反響は?

ダルーゼCEO:プロジェクト自体は2017年にアプリからスタートし、21年5月に店舗での回収も開始した。クーポンと引き換えに着なくなった「プチバトー」の製品を買い取って再販するという仕組みを作り、フランスでは6店舗目での導入がはじまったところだ。今後ポップアップや百貨店など店舗数を増やし、オンラインサイトでも取り扱いたい。フランスの消費者からは、「もっと早く始めてほしかった」「耐久性のある洋服を作る『プチバトー』だからこそできること」と非常に好評だ。

WWD:課題は?

ダルーゼCEO:引き取りや再販価格については、もっと詰めていきたい。洋服の、Tシャツは5〜10ユーロ(約680〜1300円)、コートは30〜35ユーロ(約4000〜4700円)、ベビー服は1〜2ユーロ(約130〜270円)で買い取っている。30年までには2次流通で利益の10%を稼ぐまでに成長させたい。状態の良くない服はリメイクして再販するなど、工夫も増やす予定だ。

WWD:日本でも開始する?

ダルーゼCEO:フランスに比べ、日本の2次流通はこれからだと感じているが、この先間違いなく盛り上がりをもっと見せるはず。日本でもこのプロジェクトをスタートさせたいと考えている。この秋にでも、東京で試験的に始めていくことに日本チームも前向きだ。

WWD:プロジェクトを開始したきっかけは?

ダルーゼCEO:自社工場で手掛ける製品の耐久性と質に誇りがあるからこそはじめられたこと。“125回洗濯してもへこたれない”ことが実験済みのTシャツは「プチバトー」のアイコンであり、再販が可能なアパレルを取り扱っているというブランドのバリューを保証している。スローファッションを推進して、洋服の“人生”がゴミ箱でおわらないよう取り組めるのも、耐久性への自信があるからだ。

WWD:新スローガン、「自由(Liberty)」「品質(Quality)」「持続可能(Durability)」の策定による、消費者や従業員、ブランドのあり方への反響は?

ダルーゼCEO:サーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトやリサイクルの強化、2次流通を自ブランドで取り扱うに際して、「品質」「持続可能」の強化は必須だった。だがこれらはブランドに長く根付く基本的な価値観だ。中でも私が重きをおくのは、「自由」だ。近年、サステナビリティや社会課題についての対話が増える中で、自由で楽しい、オープンなコミュニケーションが減っていた。われわれは“真面目”になりすぎてしまった。もっと遊び心を持って自由に、プレイフルにならなければ。

WWD:社会課題といった話を、遊び心を持って伝えるのはとても難しいこと。どう実践していく?

ダルーゼCEO:消費者とのコミュニケーションのためにショートムービーを活用するなど、自由な発想を増やそうと動いている。22年末には、新たなコンセプトストアの開店を予定している。「プチバトー」を着るのは、子どもたちがメイン。子どもはいつだってクリエイティブで遊び心を持っている。製品ばかりを見せるのだけでなく、子どもたちが持っているものを生かして、彼らの感情や、外でどんなことをしているか、ありのままの姿を見せていきたい。それがプレイフルな発信につながるだろう。

WWD:「子供たちと自然をつなぐ」というミッションに込めた思いは?

ダルーゼCEO:子どもたちが自然の中で遊びながら自然に触れ、クリエイティビティーと自己肯定心を育んでほしいという願いを込めた。自然の楽しさがわかると、環境を守る意識も自発的に生まれるはず。汚れを気にせず外で思いっきり遊び回れる洋服と共に、子どもたちにはのびのび成長してほしい。

WWD:これまでどのような取り組みを?

ダルーゼCEO:従業員向けのサステナビリティに関する教育プログラムを設け、子どもを対象にワークショップなどを開催している。日本では「プチバトー」がスポンサーを務める「キョウトグラフィー(KYOTOGRAPHIE)京都国際写真祭」によるプログラムの一環として、7〜12歳くらいの子どもたちを京都と東京で約100人招待し、今地球に何が起こっているのか、マイクロプラスチックとは何か、海洋環境などについて対話。環境活動に力を入れている映像作家の丹下紘希を招いて、動画や写真を見せながら理解を深め、その後「地球環境を守るため、大人にしてほしいこと」をプラカードに書いてもらった。そうすると子どもたちはプラカードを持って、保護者にその日学んだことについて語る。子どもたちに新しいことを教えると、大人も巻き込める。フランスでは水の大切さを教える「ウォーター ファミリー(Water Family)」とタッグを結んで、学校でレクチャーを行っている。

WWD:従業員へのサステナ教育は?

ダルーゼCEO:「世界海洋デー」の6月8日には、工場で働く人も含む世界中の「プチバトー」の従業員に、水汚染に関する教育の場を設けている。勤務日をボランティア活動の時間にあてて、従業員が学校で子どもたちに学校に教える制度も確立。ワークショップやボランティア活動を通して2023年のおわりまでに世界で100万人の子どもに教育の機会を提供するという目標に向けて一丸となって取り組んでいる。21年は8万人を対象とした教育の場を創出。22年は40万人を目標にしている。

WWD:25年までのBコープ認証の取得を掲げているが、原動力は?

ダルーゼCEO:より良い会社であり続けたい一心だ。環境問題へのアプローチだけでなく、社会責任の追求にも目を向けている点に共感し、絶えず努力を続ける源となるよう目標に設定した。会社として利益を求めるだけでなく、社会に向き合う姿勢を表明するにはうってつけだ。

WWD:これからの展望は?

ダルーゼCEO:今後挑戦したいのは、サブスクリプションサービス。赤ちゃんの成長に合わせたベビー服の月額レンタルサービスなどを、まずはフランスで始めたい。この2年で取り組んだことの1つは、役員レベルに女性を増やすこと。就任当時の女性役員は10人中1人だったが、今は6人にまで増えた。それでも、フランスチームには多様性という観点でまだまだ課題がある。もっと異なるバッググラウンドを持つ人を増やし、子どもたちを見習ってクリエイティブでプレイフルでありたい。

WWD:日本チームとはどう連携していく?

ダルーゼCEO:日本チームが始めたアイデアがフランスで導入されたこともあった。例えば、日本のギフトボックスはとてもクリエイティブでホスピタリティに溢れていたので、フランスでも取り入れた。細かいところまで行き届きた気持ちいいサービスは、とても参考になる。フランス基準で見ると本当に“プレミア”な接客だ。eコマースも日本は非常に強い。世界でも「プチバトー」のビジネスの約50%を占めているので、日本で生まれたバーチャル試着サービスを展開するなどして、高めあっていけたらと思う。

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