コロナ禍で世界にDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せたことに加え、2021年10月にはフェイスブックが社名をメタに変更。さらに、VR・AR(仮想現実・拡張現実)およびメタバース関連に1兆円を投じると発表したことで、メタバース市場に注目が集まっている。ブルームバーグ インテリジェンスの調査では、メタバース市場は24年にはおよそ8000億ドル(約102兆円)規模になると予想されている。
早期に参入した企業やブランドは、そこでどんなことを行っているのか?そこにビジネスチャンスはあるのか?「メタバース」の定義についてはさまざまな意見があるが、ここではシンプルに“アバターで入る世界”としたい。
「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は2021年9月、オンラインゲームのフォートナイト(FORTNITE)とコラボし、「ストレンジ タイムス」と題したエリアを特設。21年秋コレクション(21-22年秋冬に相当)発表のために制作したオンラインゲーム「アフターワールド:ザ・エージ・オブ・トゥモロー」で表現した世界観をここにも創出し、仮想店舗も設けたほか、スキン(コスチューム)や武器、バックパックなども販売。リアルでもフォートナイトのロゴ入りアパレルなどを販売した。
同じオンラインでも、画面上に広告やキャンペーン動画を流すのとは異なり、メタバースでは“空間”を作り込め、“体験”を提供できる。エリアに置かれたスニーカーを集めることで、特別なアイテムを獲得できるなどゲーム的な要素も取り入れて、訪れたフォートナイトユーザーを「バレンシアガ」ワールドへと誘った。
ゲームは3D化とオンライン化により、世界中から同時アクセスして多くの人と一緒に楽しめるコミュニケーションの場へと進化した。フォートナイト、同じくゲームのロブロックス(ROBLOX)は世界に億単位のユーザーを抱える。そこで“体験”を提供し、ブランドに親しんでもらうことは、ブランド認知の向上と新規顧客の獲得、既存顧客の満足度を高めることになる。多くの米国の子どもたちは放課後、ロブロックスにアクセスして、友だちと一緒にゲームやおしゃべりを楽しんでいるという。次々世代の子どもたちが親しむテクノロジーは、将来の主戦場になる。
単に買い物をするなら ECの方が断然便利
バーチャルショップと聞くと、ついECのバーチャル版と考えがちだが、目的のある買い物ならば、普通にECを検索した方が、選択肢も多く、目当てのものに早くたどり着ける。少なくとも今のところは。
もちろん商品の3Dモデルを並べて、EC経由でリアル商品の購入を促すことも可能だ。しかし、メタバースでの買い物体験でECと異なるのは、誰かと一緒に買い物が楽しめたり、ショップスタッフなどその場に居合わせた人とのコミュニケーションにある。小売企業がメタバースに取り組むからには、そこをいかに掘り下げるかが肝。誰かを誘いたくなったり、そこでの体験を共有したくなるような仕掛けが重要だ。
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