ファッション

HYDE、セカオワ、kemioまで 「60%」が仕掛ける“日本人アーティスト×アジアブランド”の異業種コラボが好調

 アジアブランドに特化したオンラインセレクトショップ「シックスティーパーセント(60%)」が仕掛ける“日本のアーティスト×アジアブランド”のコラボレーション企画が好調だ。これまでHYDE×「ハイパンダ(HIPANDA)」(中国)、セカイノオワリのFukase×「モアザンドープ(MORE THAN DOPE)」(韓国)、kemio×「ハヴィズム(HAVISM)」(韓国)など、50以上の限定コレクションを発売。商品の売れ行きだけでなく、アジア進出するアーティスト×日本進出を狙うアジアブランドの声を捉えた企画は、相乗効果のあるプロモーションとしても注目を集めている。

 さらに6月16日には、アジア発のハイエンドなストリートブランドを集約した新エリア「60% レベリー(60% LEVELY)」を同サイト内にオープン予定だ。アジアのストリートシーンを牽引するストアとして、さらにブランドのラインアップを強化する。国を超えての異業種コラボを成功に導くマッチングのポイントとは?さらに今アジアで注目される日本人アーティストとは?同コラボ企画を一手に担う木下程アライアンスマネジャーに話を聞いた。

WWD:日本人アーティストのアジア進出の魅力とは?

木下程アライアンスマネジャー(以下、木下):急成長するアジアマーケットの規模だ。K-ポップやKスタイルの世界的なトレンドから、日本のアーティストもグローバルに発信すべきと考えるエージェントや芸能事務所が増えている。日本は人口約1億2500万人と市場規模は小さくないが、世界に発信しないと同じ土壌では戦えないとう認識が広まりつつある。

WWD:反響があったコラボ企画は?

木下:2020年のクリスマスに発売したHYDE×「ハイパンダ」は、特に反響が大きかった。日本と中国だけでなく、ヨーロッパ圏の方からもDMがたくさん届くなど、かなりの盛り上がりを見せた。「ハイパンダ」も現地では知名度がかなり高いが、この時はレジェンドであるHYDEさん側からの流入が顕著だった。韓国の「FCMM」×日本の「ウィンダンシー(WIND AND SEA)」の企画では、ビジュアルにアイドルグループNCTの日本人メンバーであるSHOTAROさんを起用した。影響力のあるモデルのパワーも加わって、相乗効果が3倍に。急遽在庫を追加して、数量限定で再販するほど好評だった。

WWD:5月には韓国の「マハグリット(MAHAGRID)」×日本の「ヤンガーソング(YOUNGERSONG)」とのコラボコレクションも発売した。

木下:「ヤンガーソング」は、モデルやインフルエンサーとして活動する齋藤天晴さんが立ち上げたブランドで、Z世代から絶大な人気がある。「マハグリット」は、韓国のストリートブランドで日本にもファンが多い。コラボコレクションでは、両ブランドの定番のロゴをメーングラフィックにしたTシャツやパンツなどを発売した。

初日に目標売り上げの8割を達成

WWD:具体的な実績は?

木下:ブランドやアーティスト名は公表できないが、コラボ企画は発売日の盛り上がりが全体の売り上げを大きく左右する。アイテムの上代価格は、ブランディングなどを考慮して決めるが、平均すると1万円前後。基本的には受注生産なので「完売」はないが、反響の大きかった企画では、初日だけで数千万円を売り上げたときもあった。「マハグリット」×「ヤンガーソング」も予想以上の反響。初日だけで目標売り上げの8割を達成できた。

WWD:マッチングする上での重要なポイントは?

木下:最も大切なのは世界観が合うかどうか。知名度やフォロワー数も重要な要素のひとつではあるが、お互いの背景やブランディングの方向性は同じかなどを重視している。特にアーティストコラボの場合は、親和性のありそうなブランドを私たちから提案するといった仲介的な役割を担うことが多いが、そこからは両者の合意次第。企画段階で、売れ筋アイテムや価格帯などの情報は共有するが、お互いの意見を汲みつつバランスを取りながら企画を進めていく。

WWD:今アジアで人気の日本のアーティストは?

木下:YOASOBIやオフィシャル髭男dism、INIなど。現地にもファンが多いという理由で、一緒にやってみたいとコラボのリクエストをもらうことが多い。日本のアニメも人気なので、マンガやそのキャラクターとコラボしてみたいという話もたびたびいただく。

WWD:アジアで勢いのあるブランドは?

木下:「マハグリッド」や「エジュクロ(ASCLO)」、アクセサリーブランドなら「ジャストラバー(JUST LOVER.)」などの韓国ブランドが売れ筋。「シックスティーパーセント」でもラインアップの約8割が韓国ブランドだ。次に続くのが、ディープなアジアンカルチャーが魅力の台湾や香港ブランド。彼らの共通点は、“1枚でサマになる”ストリートブランド。グラフィックやロゴを使ったアイテムの提案が上手い。サイトの顧客属性は10代後半~20代後半が9割。平均購入単価は1万2000円前後だ。

ハイエンドなブランドをそろえた新エリアをオープン

WWD:以前に「日本ブランドのラインアップも強化したい」と話していたが進捗は?

木下:6月16日にアジア発のハイエンドなストリートブランドだけを集約した新エリア「60% レベリー(60% LEVELY)」をオープンする予定だ。立ち上げのタイミングには、日本の「エクストララージ(XLARGE)」、韓国の「アクメドラビ(ACME DE LA VIE)」、タイの「カーニバルバンコク(CARNIVAL BANGKOK)」など、計12のブランドをラインアップする。さらにローンチ後には、フリーペーパー「FLJ」と共同制作した「60% レベリー」独占号を部数限定で発行する。日本ブランドの取り扱いも本格的にスタートするので、日本ブランド×アジアアーティストのコラボ企画も実施していきたい。

WWD:あらためて、日本ブランドの強みとは?

木下:モノづくりの精神に限る。メイド・イン・ジャパンの品質は、他国からの印象も実際のクオリティーも秀でている。ただ、韓国や中国などのアジアでは、新生ブランドでも立ち上げから公式サイトを多言語化するなど、スタートからグローバル目線。全てのブランドではないが、日本ブランドも「まずは国内」ではなく「いきなり世界発信」でもいいと思う。

WWD:この1年間で扱うブランド数も約250から600に増えて急成長した。

木下:ブランド数を増やせば必ずしも売り上げが増えるわけではない。でも「シックスティーパーセント」でしか購入できないブランドを増やすことが、自社の強みにも、ブランド側のスケールメリットにもなる。来年には1000ブランドまで増やすのが目標。アジアブランドを日本に紹介する役割だけでなく、日本ブランドを海外に向けて発信する使命も担っていきたい。

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