ZOZOは5月24日に、6月23日で「ゾゾスーツ」を使った計測や閲覧を停止すると発表した。「ゾゾスーツ」は2017年11月に創業者で前社長の前澤友作氏が鳴り物入りで発表し、ピーク時にはZOZOが時価総額1兆5000億円を突破する原動力になった。だが、その後、ゾゾスーツと連動して販売したプライベートブランド(PB)「ゾゾ」は不発で、19年9月にはカリスマ経営者であった前澤氏自身が持ち株をヤフーに売却し、ZOZOからも去った。「ゾゾスーツ」はアパレル産業の何を変えようとし、何を変えられなかったのか。(この記事はWWDジャパン2022年6月6日号からの抜粋です)
「ゾゾスーツ」の登場は華々しかった。創業者で当時社長だった前澤友作氏の誕生日に合わせて17年11月22日に発表。センサー付きのボディースーツを無料配布し体の詳細な3Dデータを計測できるというアイデアは、多くのメディアやアパレル業界だけでなく、一般人も熱狂させた。
「ゾゾスーツ」は発表からわずか半年で予約が100万着に達し、18年4月には低コストの水玉マーカー型「ゾゾスーツ」を開発。PB「ゾゾ」のアイテムとともに、3年後に時価総額3兆円、商品取扱高5150億円という中期経営計画もぶち上げた。「ゾゾスーツ」とPB「ゾゾ」を携えたスタートトゥデイ(現ZOZO)は、まさに無敵だった。ファッションECではぶっちぎりの王者で、18年7月18日には時価総額が1兆5052億円に達した。
当時の前澤氏が本気でアパレル革命を目指していたことは間違いない。中期経営計画の中では、「服の買い方」「服の選び方」「服の作り方」の3つの面で改革を目指し、「自分の体形に合ったあらゆる服が、注文するとすぐにオンデマンドで製造され、数日後に届く、『ZOZOSUIT→オンデマンド生産→プライベートブランド ZOZO』という新しい流通の在り方を、より一層拡大してまいります」と高らかに謳い上げた。ZOZOのテクノロジー部門を率いていた伊藤正裕取締役(当時)は後日のインタビューで「これほど多くの身体の3Dデータが集まったことは世界的に見てもなかった。データを生かすために既存のアパレルCADでは難しいと判断し、独自にソフトウエアも開発したし、オートメーション化を最終目標とした生産のためのプログラムやソフトウエアも開発していた」と語っている。
だが、期待と興奮が大きかった分だけ、冷めるのも早かった。中期経営計画では初年度に200億円、3年後に売上高2000億円を目指していたPBは27億円しか売れず、125億円の赤字を計上し、撤退した。
「ゾゾスーツ」発表当初からアパレル業界の一部では、マスカスタマイズを前提としたPBに懐疑的な声があった。大量の3Dデータを集めたとして、それがそのまま、本当に購入者の欲しいものと一致させられるか、という声だ。その上、ZOZOは服作りに関して全くの素人だった。その象徴的な例がフルオーダーを謳った紳士スーツだった。
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