「ディーゼル(DIESEL)」は6月9日、クリエイティブ・ディレクターのグレン・マーティンス(Glenn Martens)が来日し、2022-23年秋冬のファッションショーを開催した。巨大な人間型バルーンの、足の間やお腹の下をモデルが通り抜ける演出はミラノ・コレクション同様。“Y2K”を感じるブラトップやローライズジーンズ、ミニスカートも変わらないが、日本での発表に際して真っ赤な6ルックを追加した。ショーの翌日、来日中は連日ナイトライフを満喫し、若干二日酔い気味だった(!?)グレンに話を聞いた。
「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):22-23年秋冬コレクションを、日本でもファッションショーで発表した理由は?
グレン・マーティンス「ディーゼル」クリエイティブ・ディレクター(以下、グレン):「ディーゼル」は、グローバルなブランド。世界中の人と出会い、耳を傾けるためにもミラノ以外の場所でファッションショーを開催してみたかった。日本を選んだのは、(コロナ禍の影響で)アジアのゲストはミラノ・コレクションを訪れることができなかったから。特に日本は「ディーゼル」にとって大切な市場で、「ディーゼル」らしい「エクレクティック(折衷主義の意味。ここでは、さまざまなカルチャーが融合している様子を表す)」なマーケット。東京でファッションショーを開くことは、「エクレクティック」で「ファン」な「ディーゼル」らしい。
「WWD」:だからこそミラノ・コレクションを丸ごと、東京に持ってきた。
グレン:バルーンも含めてね(笑)。あのバルーンは、90年代に広告のあり方を変えた「ディーゼル」の歴史を表現している。ちょっとダサいかもしれないけれど、セクシーで、驚きに溢れ、楽しかった「ディーゼル」の広告を、ランウエイショーで表現したかった。
「WWD」:一方、真っ赤な6ルックを追加した。
グレン:より強いエネルギーを表現するため、色が欲しかった。日本だから、「ディーゼル」だから「赤」ではなかったけれど、一番エネルギッシュだと思って選んだ色が、日本にとっても「ディーゼル」にとっても大事な色だった。
「WWD」:そのエネルギーこそ、「ディーゼル」で表現したいもの?
グレン:パリで生まれ育った僕にとって新鮮な、深掘りすべき「ディーゼル」のアイデンティティはエネルギーだ。それはオープンマインドに、なんでもすぐに結びつける原動力。ブランドやデザインチームは、その本質を40年間体現し続けている。究極言えば、「尊敬しあえていれば、なんでもオッケー」。そんな社会を作りたい。「ディーゼル」は、ハッピーなメルティングポット。それは今世界中が求めていることだし、これまで“スカし”続けてきたパリでも、そんなムードを感じている。でもハッピーなメルティングポットは、どこにでもあるワケじゃない。誰かがボタンを押さないと、実現しないかもしれない。そんなとき「ディーゼル」が、真っ先にボタンを押す存在になったらと思う。
「WWD」:会場には、多数のティックトッカーやユーチューバーが来場し、これまでのファッションショーとは異なる、新しいエネルギーを発信していた。
グレン:デジタルSNSこそ、異なるバックグラウンドの人たちが尊敬しあっているハッピーなメルティングポットだ。
「WWD」:一方、資源利用を最小限に抑えて生産するプロジェクト“ディーゼル ライブラリー(DIESEL LIBRARY)”など、サステナブルな取り組みには真剣だ。
グレン:デニムは、世界を汚してきた。だからこそグローバルブランドの「ディーゼル」が、率先すべきだ。コレクションピースはどんな方法で作っても大した問題にはならないが(笑)、コマーシャルなデニムは違う。使うコットン、洗い、そして加工。全てを順次、進化させたい。デニムの次は23年のプレ・コレクションで、オーガニックコットンや再利用した素材を活用したジャージーの商品化に成功した。次はレザー。僕が今も着ている祖父のブルゾンのように、価値あるレザーウエアを生み出したい。
「WWD」:真剣に取り組まなければならないサステナブルについては、「メッセージの発信までシリアスになりすぎた」と反省するブランドも多い。楽しい「ディーゼル」として、そのメッセージをどう発信する?
グレン:例えばポケットをひっくり返したり、股間のファスナーを開けたりすると初めて見えるサステナブルなメッセージは、「ディーゼル」らしいと思う。「説教クサく」ならないよう、これからも考えたいね。